さて、ロジャーズが自ら記した傾聴の5条件。その中でも「一致」「受容」「共感」は傾聴の大切なポイントとしてよく紹介されます。

1961年にロジャーズが来日したとき、ある人が「一致、受容、共感の3つのうちどれが最も重要ですか?」と質問しました。

そのときロジャーズは「一致だ」と即答したそうです。

 

それほど大切な「一致」ですが、いろんな人がいろんな説明をしていて、正直、わからないところもあります。

ここで、もういちどロジャーズ自身の説明を引用してみます。

 

「一致した(congruent)」という用語は、私がこうありたいと思うあり方を表すためによく使ってきた言葉の一つである。「一致」とは、私が体験している感情や態度がどのようなものであっても、その態度に自分が気づくこと(awareness)によって、それと矛盾しないでいられるという意味である。

※『ロジャーズ主要著作集3 ロジャーズが語る自己実現の道』p51(太字は引用者)

 

そして彼はこう続けます。

これが実現できたとき、その瞬間、私は一つのまとまりのある統合された人間(a unified or integrated person)であることができるし、どんなに深いところでも自分自身であることができるのである。私が他者を信頼できると経験するとき、そこにはこうしたリアリティが存在している。

(太字は引用者)

 

さらに同じ本の少し後の部分で、ロジャーズは興味深い指摘をしています。すこし難しそうですが、大切なところなので、ぜひ読んでみてください。

私が関係の中である程度自己一致しているならば、その関係は援助的なものになっていく、ということに、私は相当の確信を持つことができる。

このことを表現する一つの仕方として、ひょっとしたら奇妙に聞こえるかもしれないが、次のような言い方もできるだろう。すなわち、私が自分自身との間に援助的な関係を形成することができるならば――自分自身の感情に感受性豊かに気づくことができて、それを受容することができるならば――私は他者に対しても援助的関係をつくることができる可能性が高まる、ということである。

(太字は引用者)

 

いかがでしょうか。自分との関係において「一致」することができて、初めて相手に対しても援助的な関係を築くことができるということですね。

もっと噛み砕いて言うと、こんな風に言えるのではないかと私は思います。

自分自身とのいい関係ができてこそ、相手の話を傾聴することができるし、また傾聴をとおして相手に寄り添い、支えることができるのだ。

まずは自分自身とのいい関係を大切にしたいですね。

仕事中に思わず「心の声」を口に出してしまっている人

 

(6)ロジャーズが語る傾聴的コミュニケーションの可能性