○REBT(論理療法)とは

REBT(Rational Emotive Behavior Therapy)はアルバート・エリス博士(Albert Ellis, 1913-2007)によって1955年に創始された心理療法です。論理療法、理性感情行動療法、合理情動行動療法、人生哲学感情心理療法など、日本では数種類の名称があります。もともとはRational Therapyという名称でしたが、感情(emotion)や行動(behavior)も重要な要素であることから、現在はREBTという名称になっています。

アーロン・ベック(1921- )が提唱した認知療法とともに、REBTは認知行動療法(CBT)の主要なルーツであるといえます。

REBTはクライエントの非合理的な信念(Irrational Belief, iB)を合理的な信念(Rational Belief, rB)へと変容させることを目指します。 非合理的な信念とはクライエント自身の目標への行動を妨げる信念のことで、「絶対に…すべき」という強い思い込みの他、いくつかの派生形があります。その信念をより柔軟でクライエントの目標達成にとって助けとなる信念へと置き換えることによって、心理的な問題を和らげ、目標へと向かう行動をサポートします。

○REBTの7つの原理

REBTの基本原理は7つに凝縮することができます。

  1. 人間の感情を決定するもっとも重要で直接的な要因は認知(cognition)である。簡単に言えば、「私たちは考えるように感じる」(We feel what we think)ということ。もちろん外部の出来事も無関係ではないが、感情を引き起こす直接の原因ではない。
  2. 不合理な思考(irrational thinking)が感情的な苦しみの主要な決定要因となる。それはたとえば、「誇張(exaggeration)」「単純化しすぎ(oversimplification)」「過度の一般化(overgeneralization)」「非論理的な仮定(unexamined illogical assumptions)」「誤った帰納(faulty deductions)」「絶対化した考え(absolutistic ideas)」「感情や考えや現実についての要求(demands that emotions, thoughts, or realities do or do not exist)」などである。
  3. 混乱した感情を変えるいちばん効果的な方法は、思考を分析することである。苦悩が思考の産物だとすれば、苦悩を乗り越えるためにはその思考を変えることが最もいい方法である。
  4. 人間はこの世界について合理的に考える性質も、非合理的にも考える性質もある。
  5. ネガティブな出来事に対する感情を、REBTでは2つの異なるタイプに分ける。1つは「助けになる(helpful)」「健康的な(healthy)」「機能的な(functional)」「適応性のある(adaptive)」ものであり、他方は「助けにならない(unhelpful)」「機能不全の(dysfunctional)」「適応力のない(maladaptive)」ものである。健康的な感情は機能的で適応力のある行動をみちびき、不健康な感情は機能不全で適応力のない行動をみちびく。また、この不健康な感情(行動)は不合理な思考(irrational thinking)とつながり、建設的な感情(行動)は合理的な思考(rational thinking)とつながっている。
  6. 人の感情や行動に影響を与えるのは、過去よりもむしろ現在である。遺伝や環境は精神疾患が生じる際には大きな役割を果たすが、それが今も続いていることについては第一に注目すべき点ではない。人は自分をイラショナルビリーフへと繰り返し自己説得することで、人は自分を混乱させ続けるのである。
  7. ビリーフは変えることができる、決して簡単ではないが。イラショナルビリーフは、自分の思考を認識し、それに挑戦し、修正するように根気よく努力し、感情的な混乱を減らし、ポジティブな経験と自分自身のゴールの達成を増やしていくことで、ラショナルビリーフに変えることができる。