REBT入門(7)E:効果的な取り組み
いよいよ、ABCDE理論の最終段階だ。
A:出来事(Activating Event)
B:ビリーフ(Belief)
C:結果(Consequence)
D:論駁(Dispute)
自分の中の不合理な考え(B)にツッコミを入れたあとは(D)、新しい効果的な考えを定着させる作業になる。
この効果的な考え・取り組みが(E)だ。ちなみに、英語ではEffectivenessと言うよ。
ここで覚えておきたいのは、心の深いところにある考えを変えるのは、決して楽な作業ではないということだ。
英語を学ぶのでも、ピアノを弾くのででも、スポーツを続けるのでも努力が必要なように、自分の考え方を変えるのにも努力がいる。
でも逆にいえば、ちゃんと努力をすれば自分をいい方向に変えていけるというのが、REBTの理論なんだ。
REBTの人間観:人間の2つの特徴
REBTの理論によれば、人間には2つの特徴がある。
1つは、物事をダメな方に考え、自分や他人を傷つけるように行動してしまう傾向。
もう1つは、そんな頑なで非合理的な考えを合理的な考えに改め、自分を変えていく能力だ。
REBTでは1つめの特徴(自滅的な傾向)に注目して、そこを変えることで、2つめの特徴(変えていく能力)を発揮できるようにする。
あなたの感情や行動は、過去の出来事や周りの環境によって決められるのではない。
あなたを苦しませているのは今の自分自身(の思い込み)だから、誰でもそれを自分で変えていけるということ。
3種類の取り組み方(E)
では、どんな方法で自分を変えていくのか?
それには大きく3つの方法がある。
- 思考から変える
- 行動から変える
- 感情から変える
この3つは連動しているから、それぞれの方法を組み合わせていけばいい。
REBT(Rational Emotional Behavior Therapy)の名称は、思考(Rational)・感情(Emotive)・行動(Behavior)に対応しているんだったね。(第3回記事)
(1)思考(考え方)から変える
たとえば、今まで「失敗したらもう終わりだ」と思い込んでいたのを、もっと合理的な考えに変換するとしよう。「失敗したら残念だ。でも終わりじゃない」というような。
すると、こんどはその新しい考えを定着させる努力が必要だ。人間は忘れっぽい生き物だからね。
その言葉を紙に書いて毎日声に出してみるとか、朝と夜に鏡に向かって唱えてみるのもいいかもしれない。
とにかく、新しい考えを繰り返しながら、自分のものにしていくやり方。
(2)行動から変える
前に紹介したエリス博士が十代のときに試した方法(女性に声をかける訓練)も行動から自分を変えるアプローチだったね。
苦手なこと、不快なこと、今まで避けていたことを、あえて数多く実行してみる。そうすることで自分が劇的に変わることもあるんだ。
たとえば、今まで悪口を言われるのがイヤで避けていた人たちに、あえて自分から話しかけてみる。
相手がいい反応を示してくれなくても全然かまわない。(だってそれは現実にありうることだし、相手の反応とは無関係に人生は続いていくのだから。)
自分で行動してみることで、気づくこともあるだろう。「相手の反応はやっぱり悪かった。だからって世界が終わるわけじゃない」とかね。
(3)感情から変える
感情からのアプローチも有効だ。
たとえば、腹が立ってしかたないことがあるとする。じゃ、こんどはその自分が腹を立てている様子を替え歌にして歌ってしまうとどうだろう。
♫わたしはいつも怒ってる〜 怒ってる〜
優しくしてくれなきゃヤダと怒ってる〜
みたいな。
自分の不健康な感情やガンコな思い込みを、ユーモラスな歌として笑ってしまう作戦だ。
客観的に見つめ克服するのは、ユーモアからでもできるんだ。
このようにABCDE理論のE(効果的な方法)は、いろんな宿題をこなしていくことが特徴だ。
失敗への取り組み方としてのREBT
失敗したとき、物事がうまくいかないときに、落ち込んだり怒ったりすることは、これから何度もあるだろう。
でもそのとき、ネガティブな感情が出来事や環境によって決まるのではないこと、自分の「思い込み」変えることで、感情や行動も変えられることを知っておくと、山あり谷ありの人生を「エンジョイ&サバイバル」していけるようになる。
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