(前回)REBT入門(2)15歳の君にも分かる~失敗への取り組み方:「100人ナンパして分かったこと」
REBT入門(3)ABC理論
苦しむか、苦しまないかは、自分で選べる
エリス博士はこんな意味のことを言っている。
「失敗したとき、物事がうまくいかないとき、苦しむか、苦しまないかを、あなたは自分で選べるようになる。」
…「苦しむか、苦しまないかを自分で選べる」とはどういうことだろう?
社会一般の常識では、私たちは周りの人や出来事によって、苦しめられたり、怒ったり、動揺したりするはず。
たとえば、「あいつが悪口を言ったから、私は怒った(落ち込んだ)」というように。
ところがREBTの理論では、そうではないんだ。
「あなたを苦しめているのは、周りの人や出来事ではない。あなた自身なのだ」と。
REBTではそれをシンプルな「ABC理論」として説明する。
「出来事」が「結果」をもたらすのではない。
たとえば、こんな状況があるとしよう。
(例1)
親友だと思っていた友達に裏切られた。あんなに仲良くしていたのに、手のひらを返されるとは。許せない! そして同時に、自分はもう何の価値もないように感じる。誰からも愛されないダメ人間だ…
この人は、「友達に裏切られた」という「出来事」が、「怒り」や「絶望」の原因となっていると思いこんでいる。
でも、果たしてそうだろうか。同じ状況だけど、別の結果になる例を見てみよう。
(例2)
親友だと思っていた友達に裏切られた。あんなに仲良くしていたのに、手のひらを返されるとは。とても残念だ…。だけど友達に裏切られたからといって、この世界の終わりじゃない。人生はつづくさ。何とかやっていこう。
どうだろう。
「長年、親友だと思っていた友達に裏切られた」という「出来事」は同じだけれど、「結果」は違う。
例1の人は、「許せない」と怒ったり「自分はダメ人間だ」と落ち込んだりしている。
一方、例2の人は「残念」と思いながらも、だからといって「この世界の終わりじゃない」と考え、「何とかやっていこう」と、これから先に目を向けている。
ここで分かるのは、「出来事」が「結果」を引き起こしているのではないことだ。
もし「出来事」が「結果」をもたらすのだとすれば、同じ「出来事」が起これば、誰もが同じ「結果」になるはずだ。
でも、そうはならない。
なぜだろう?
ここで、「出来事」を(A)、「結果」を(C)としよう。
REBTでは、出来事(A)と結果(C)の間に、「信念/思い込み/ビリーフ」(Belief)があると考える。つまり(B)だね。
(英語では「出来事・逆境(A)」は “Activating Event” or “Adversity”(A)、「結果(C)」は “Consequences”)
(例1)のケースだと、この人は「友達に裏切られることは絶対に起こってはならないことだ」とか「友達に裏切られたら、自分は無価値だ」というような(B)を持っている。
だから、「友達に裏切られる」という「出来事」(A)が起きたときに、その(B)を介して、「怒り」や「落ち込み」という「結果」(C)を引き起こしている。
一方、(例2)のケースでは、同じ「出来事」(A)に遭遇しても、「友達に裏切られることは残念だ。でもそれはあり得ることだし、自分の価値がそれで決まるわけじゃない」という別の(B)を持っているから、「残念だけど、何とかやっていこう」という別の「結果」(C)になる。
おなじ出来事(A)が起こっても、あなたの心の中にある(B)(ビリーフ)によって、結果(C)がまったく違ってくるということだ。
どうだろう。この記事の冒頭で紹介した「出来事によって苦しむか、苦しまないかはあなた自身が選ぶ」ということの意味がわかるだろうか。
あなたを苦しませるのは、あなたのビリーフである
心理療法によっては、「過去のできごとが今の自分を決める」という考え方もあるけれど、REBTは真っ向からそれに反対する。
つまり、「あなたがいま苦しんでいるのは、あなたの中にあなたを苦しませる(B)があるからだ」という考え方。
「過去のできごと」でも「今のできごと」でもなく、あなた自身の中にある(B)。そこに、あなたが苦しみから自由になったり、自分の感情や行動をコントロールする鍵があるということ。
逆にいえば、その(B)を変えることができれば、どんな「できごと」(A)があっても、「結果」(C)を変えられる、ということだね。
その意味で、REBTは人がどんな出来事や逆境にも負けないで、望ましい方向に変わっていくことを、強く後押しする心理療法なんだ。
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