傾聴に帰ろう。ロジャーズに帰ろう!

ロジャーズに帰れ!!

明治大学の諸富祥彦(もろとみよしひこ)教授『ほんものの傾聴を学ぶ』という本でこう書いています。

「傾聴に帰れ!ロジャーズに帰れ!!」

つまり、カウンセリングの基礎は傾聴であり、また傾聴の意味を深く理解するには、その創始者であるカール・ロジャーズについて知ることが有効だというのです。

 

では、傾聴の元祖ともいえるアメリカの心理学者カール・ロジャーズ(1902〜1987)は一体どんな人物で、また傾聴についてどんなことを語っていたのでしょうか?

ここでは私自身の勉強も兼ねて「傾聴の元祖!カール・ロジャーズ入門」と題した記事を皆さんにお届けします。

「傾聴って何の役に立つの?」「私の傾聴ってこれでいいのかな?」「カール・ロジャーズという名前は聞いたことあるけど…」などなど疑問や好奇心が湧いてきた方に、ちょっとしたきっかけとして役立てていただければ幸いです。

カール・ロジャーズと「カールおじさん」のイラスト

イラスト:くぼなおこ

 

ロジャーズを知れば何がわかるか? カタルシスでもアドバイスでもない「傾聴」の役割とは?

ロジャーズの傾聴について知るためには、それが「何とちがうのか」に注目すると便利です。ここでは比較のために、誤解されやすい2つのこと「カタルシス」「アドバイス」を取り上げます。

皆さん。相手の話に耳を傾ける「傾聴」の効果として、こんなことを考えていらっしゃる方はいませんか?

  1. カタルシス:言えなかったことを話して聴いてもらうとスッキリする。傾聴にはそんな「カタルシス効果」がある。
  2. アドバイス:相手の話をしっかり聴き、いいアドバイスをしてあげたい。それが傾聴の役割だ。

いかがでしょう。まず(1)について。

もちろん「今まで言えなかったことを誰かに話せばスッキリする。心が晴れる」というカタルシス効果はあります。でもロジャーズの傾聴は決してそれだけにとどまるものではありません。

そこにはロジャーズが私たち「人間」をどんなものとして捉えていたか、つまり彼の「人間観」が深く関わってきます。

「カタルシスにとどまらない傾聴の効果とは何なのか?」…そこにぜひ興味をもっていただきたいです。

「ゲエ」と吐いて「スッキリ」しているイラスト

 

つぎに(2)アドバイスについて。

相手の話をよく聴いて適切なアドバイスをする・・・それ自体は決して悪いことではありません。アドバイスが上手くいって、悩みをかかえた人の状況が好転することもあるでしょう。

しかしロジャーズの傾聴は、それとはまったく違う方法なのです。

もう少し詳しく言うと、従来の「アドバイス型のカウンセリング/セラピー」に対して「アドバイスをしないカウンセリング/セラピー」を提唱したことが、ロジャーズの大きな特徴なのです。

だとしたら、「アドバイスをせずに何をするのか?」そこにもぜひ興味をもっていただきたいと思います。

「アドバイス」のイラスト。アドバイスが多くてうんざりしている様子

 

単なるカタルシスを目指すのでもなく、また悩みを抱える人にアドバイスするのでもない「傾聴」。カール・ロジャーズは一体どんなことを考えて、どんな方法を提唱したのでしょうか?

(2)これが私、カール・ロジャーズです。前編:ロジャーズの少年時代