ここまでで、ABCDEの流れはひととおり終わり。
あとは、大切なことを2つだけ書いておこう。
REBT入門(8)無条件の自己受容
1つは「無条件の自己受容」。自分を無条件に受け入れることだ。(REBTの用語でUSA(Unconditional Self-Acceptance)と言う)
究極の自己肯定感といってもいいかもしれない。
「無条件の自己受容」とは何か。エリス博士自身の言葉を紹介しよう。
自己受容のしかたは二つしかありません ― 条件付き自己受容か無条件の自己受容です。条件付き自己受容は、はっきり言ってダメです。
(『現実は厳しい でも幸せにはなれる』アルバート・エリス著、斉藤勇訳/文響社)※太字は引用者
条件付きの自己受容は人類最悪の病の一つです。老若男女を問わずです! 条件付き自己受容とは、ある特定の条件の下でしか自分を受け入れないことです。例えば、大きな企画を成功させたり、自分にとって重要な人から認められたり、社会に貢献したりした場合にだけ自己を受容するのです。それは非常に危険なことです。
ではなぜ「○○できたときだけ自分を受け入れる」という「条件つきの自己受容」はダメなのだろうか。
なぜ条件的自己受容はダメなのか?
なぜ条件的自己受容はダメなのだろう?
それは、「自分の価値」を獲得するためにある条件を決めたとしても、その条件を達成できないことがあるからだ。
ハードルをイメージしてみよう。
跳べるように努力するのはいい。跳べたら喜ぶのもいい。だけど、「跳べないと、自分には価値がない」と条件づけしてしまうのはマズイ。
当然、跳べないこともあるからだ。
また、今回たまたま成功からといって、これから先ずっと成功し続けられるとはかぎらない。
いや、この先そんなことはありえない。
「条件付きの自己受容」という考え方を手放さないかぎり、これから先、失敗するたびに「自分は価値がない」「自分はダメ人間だ」と打ちのめされることになる。
具体的な例で見てみよう。
条件付き自己受容の例
たとえば、「ひとに褒めてもらうこと」を自己受容の条件にしたとする。
周りにいろんな人がいて、みんなが褒めてくれるときは自分もいい気分になれる。でも…
周りの反応が否定的だったり、周りに無視されたりすると、とたんに自分の価値を見失ってしまう。不安や恐怖でどうしようもなくなってしまう。
これは不安定な状態だ。
このイラストによる説明は筆者のオリジナルだけど、条件つき自己受容についてエリス博士が「非常に危険」と言った意味が少しは感じ取れるだろうか。
では、どうすればいいのか。
それが「無条件の自己受容」だ。
無条件の自己受容
「○○できたら、自分を受け入れる」のではなく、最初から、無条件に自分の価値を認めてしまうんだ。
たとえば「わたしは生きている。それだけでOK」と自分の価値を認めてしまう。
するとどうなるか。
もちろん、周りがYESと言ってくれるときは、素直に喜べばいい。
では、周りとの関係がうまくいかないときはどうだろう?
たとえ周りがNOだと、たしかに残念だ。だからといって、それで自分の価値が変わることはない。「わたしは生きている。それだけでOK」なのだから。
無条件に自分を受け入れること。これはこれで簡単ではないだろう。本気でそれを信じるまでには訓練が必要だ。
でも、それは取り組む意味がある訓練なんだ。
「無条件の自己受容」とABC理論
「無条件の自己受容」…これは今までに解説したABC理論でいえば、大きくて優しい、健全なB(ビリーフ、信念)をもつことともつながりそうだ。
ここがしっかりしていれば、これからどんな失敗や逆境に出会っても、なんとかやっていけることだろう。