REBT入門(1)15歳の君にも分かる~失敗への取り組み方のつづき
REBTの理論を紹介する前に、REBTの創始者アルバート・エリス博士の10代のころのエピソードを紹介しよう。
エリス博士は1913年生まれのアメリカ人。2007年に93歳の長寿を全うした。
1980年代にアメリカ心理学会の会員を対象とした調査によると、「もっとも影響力のある心理療法家」ランキングで2位に選ばれました。それぐらい有名なセラピストだったんだね。
↑アルバート・エリス博士
ちなみに、そのときの1位は来談者中心療法のカール・ロジャーズ(傾聴の元祖!カール・ロジャーズ入門)。3位は精神分析のジークムント・フロイト。
REBTの特徴は「自分の非合理的な思い込み(イラショナル・ビリーフ)を変える」ところにあるわけだけど、その原体験のひとつと言える、エリス博士が10代だったときのエピソードを紹介しよう。
そこに、「自分を変える」ことについてのヒントがあると思うからね。
REBT入門(2)100人ナンパしてわかったこと
アルバート少年の挑戦:100人の女性に声を掛ける
アルバートは、ニューヨークに住む読書好きの少年だった。
ブロンクスという地域に大きな植物園があって(今もあるよ)、そこで哲学書や心理学関連の読書をするのが大好きだった。年間250日も通っていたんだって。
だけど、アルバートにはすごく苦手にしていたことがあったんだ。
それは、見知らぬ女性と話をすること。
「女性と話したい」という願望はあるのに、決して自分から話しかけることはできなかった。ときには、読書中に若い女性が話しかけてくることもあったけれど、ろくに返事をすることもできなかった。
そこで、彼はある宿題を自分に課すことにしたんだ。
それは、「植物園のベンチにひとりで座っている女性を見たら、必ず話しかけてデートに誘う」こと。ひとつの例外も言い訳もなしで。
「女性に話しかける」…自分がいちばん苦手なことをやってみるというのは、とんでもなく苦痛で不快な体験だった。
でも彼は何とかやり遂げた。1か月で100人の女性に声を掛けることができた!
結果は100戦100敗!でも…
その結果は…
100人に声をかけて、99人にその場で断られた。
たったひとりだけ、デートをOKしてくれた女性がいた!
…だけどその女性も、約束の場所に現れなかった。
つまり、アルバートは「見知らぬ女性に話しかける」という、自分が苦手なことにあえてチェレンジ、見事に全敗したわけだ。
ところが、自ら課した宿題をやり遂げてみて彼はこう思ったんだ。
「怖ろしいことはなにも起こらなかった」と。
女性たちはデートの誘いを断ったけれど、だからといって、アルバートを罵ったり、走って逃げたり、叫んだり、警察を呼んだり…ということはなかった。
一方、アルバートは女性と話すことへの恐怖を克服でき、どんな女の人とも気楽に話せるようになった。
そして19歳の彼は、こう結論づけたんだ。
「僕はデートの誘いに失敗した。それでも人生を楽しめる!」と。
アルバート少年の体験とREBTの理論
ここでアルバートが試したのは、「行動から自分を変える」という方法だ。彼は、当時の行動療法の本を読み自ら実験して、効果を確信したというわけ。
ところで、自分を変える方法は、大きく3つある。それは「思考(認知)から変える」「感情から変える」「行動から変える」の3つ。
REBTの正式名称はRational(理性)Emotive(感情)Behavior(行動)Therapy(療法)だ。これは心理的な問題に3つの方向から取り組むことができることを意味している。
今回の記事で紹介したのは、アルバートが実践した「行動から変える」方法。
でも、そこで変わったのは行動だけではない。アルバートの思考も変わったんだ。
「見知らぬ女性に話しかけるのは怖ろしい」「デートに誘って断られたらみじめだ。もうやっていけない」という考えから…
「デートに誘って断られるのは残念。でもそれは最悪のことでも世界の終わりでもない。僕は人生を楽しめる」
という考えに変わったんだ。
「思考」「感情」「行動」は結びついていて、そのどの方向からでも自分を変えることができる。それがREBTの特徴でもあるんだ。
さて、ここで紹介したのは「行動から自分を変える」例だったけど、REBTの最大の特徴はその「思考」との向き合い方にある。
次の記事では、「失敗への取り組み方」の中でも「思考から変える」方法、ABC理論を紹介するよ。
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