前回の記事(4)で、ネガティブな感情にも2種類あり、それを「不健康→健康」へと変えるのがREBTの目標だという話をした。
では、どうやって変えるのか?
REBT入門(5)非合理的な思い込み
ここで、前に話した「ABC理論」を思い出してほしい。
おなじ(A)「出来事」が起こっても、その人がどんな(B)「ビリーフ/考え」を持っているかによって、(C)「結果」が違ってくるんだったね。
ここで注目したいことがある。
BとCは連動している
それは、「BとCは連動している」ということだ。
つまり…
- 健康な(B)は健康な(C)と連動している。
- 不健康な(B)は不健康な(C)と連動している。
「不健康でネガティブな感情(C)を生み出しているのは、出来事(A)ではない。あなた自身の思い込み(B)なのだ」というのがREBTの理論。
だから、感情(C)を「不健康→健康」に変えるためには、(B)を「不健康→健康」に変えてやればいい。
それがREBTの基本戦略だ。
この場合の不健康な(B)を「イラショナルビリーフ」と呼ぶ。
(「ラショナル」rationalは「合理的・理性的」、それに対して「イラショナル」(irrational)は「非合理的・非理性的」という意味)
4種類のイラショナルビリーフ(非合理的なB)
代表的なイラショナルビリーフを見てみよう。
(1)「ネバナラヌ」ビリーフ
「ネバナラヌ」ビリーフは、「絶対に○○でなければならない!という強い思い込み」のこと。
たとえば…
・自分は絶対成功しなければならない。
・ルールは絶対守らなければならない。
・彼は私を公平に扱わなければならない。
英語で言えば「MUST」の気持ちが強すぎるんだね。
思い込みが強すぎると、感情や行動のコントロールが効かなくなりがち。
学校でルールを守らない生徒を見かけて、怒りが押さえられなくなる人がいるとしよう。
こういう人は、「ルールは絶対に守らネバナラヌ」とか「間違ったことをシテハナラヌ」とか、そういう「ネバナラヌ」が強すぎるんだね。
(冷静に注意するのならいいけれど、「怒りが押さえられない=自分がコントロールできない」のはモンダイだね。)
そして「ネバナラヌ」ビリーフが強すぎると、それが達成されない場合に、次の3種類のビリーフが生まれることになる。
- 「怖ろしい」ビリーフ
- 「耐えられない」ビリーフ
- 「価値を下げる」ビリーフ
(2)「怖ろしい」ビリーフ
「試験に絶対合格しなければならない」が強すぎる人は、「不合格だったら怖ろしい」というビリーフも持つことになりがち。
「スピーチに失敗したら怖ろしい」「友達に無視されたら怖ろしい」…そんな「怖ろしい」ビリーフがあると、動揺しやすくなったり、自由に行動できなくなったりする。
(3)「耐えられない」ビリーフ
「宿題を完璧にやらなければならない」と思い込みすぎる人は、そのプレッシャーに「耐えられない」ことになりやすい。そして宿題をすぐに投げ出したり、ぜんぜん取り掛かれなかったりする。
「彼女に好意を示してもらいたい」が強すぎると、「無視されることは耐えられない」となり、自然に振る舞えなくなってしまう。
(4)「○○はダメだ」(価値を下げる)ビリーフ
「○○はダメだ」というように「価値を下げる」ビリーフ。
その対象が「自分」なら「自分はダメだ」となる。「受験に失敗したから」「会社をクビになったから」「異性にフラれたから」…「自分には価値がない/自分はダメだ」となるケース。
あるいは、対象が「相手」になると「お前はダメだ」となる。「私に対して好意を示さないお前は…」とか「こんな簡単なこともできないお前は…」とか。つまり相手に対する「ネバナラヌ」が強すぎて、それが満たされないときに相手を攻撃してしまうケース。
ほかに、対象が「人生」「社会」「世界」になる場合もある。「こんな世の中はダメだ」と否定してしまうケース。
ビリーフを「イラショナル」→「ラショナル」に
まとめると、こうなる。
まず、「不安」「怒り」「落ち込み」などの感情(C)は出来事(A)ではなくて、ビリーフ(B)が引き起こしているのだと知ること。
そして、「感情とビリーフ」が連動していることを知ること。
だから、感情(C)を「不健康」→「健康」へと変えるためには、ビリーフ(B)を変えればいいということ。
これがREBTの方法だ。つまり、感情を適正化するために、ビリーフ(信念、思い込み)を適正化する。
もしそれができれば、人間は「過去」や「出来事」に支配されているわけではなく、自分で自分を変えていくことができることになる。
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