世界最弱のヒーロー「ストローマン」(わら人形論法)

ストローマン(藁人形)のイラスト

あなたは正義の味方「ストローマン」を知っていますか。
ストローマンはテレビにも映画にも登場しませんが、あなたの周りにしょっちゅう出現します。一方的に攻撃されるだけ。反撃もできない。“世界最弱”のヒーローなのです。

「ストローマン」とは「わら人形」のこと。
喧嘩でも、ボクシングでも、相手と本気で戦うのは勇気がいります。自分も反撃を受けるし、相手が強ければこちらが一撃で倒されてしまうかもしれません。
だけど、相手によく似た「わら人形」をやっつけるだけなら簡単です。無抵抗だし、しょせん麦わらだし…。

議論も同じです。
相手の主張を本来のかたちではなく、不当に歪めたり誇張したりして、攻撃しやすいかたちに変形してから批判する手口を「わら人形(ストローマン)論法」といいます。

(例1)

子供:犬を飼ってよ。
母親:ダメ。
子供:犬がいたら番犬になるよ。
母親:ダメダメ。
子供:ママはこのお家に泥棒が入ってもいいんだね。
母親:そんなこと言ってないでしょ。

ここで母親が犬を飼うことに反対している理由は、エサ代の問題だったり、きちんと世話をできる環境にないことだったりします。少なくとも防犯の問題ではないとしておきましょう。。
その場合に母親の主張を「防犯を軽んじてもいい」「家に泥棒が入ってもいいと思っている」と歪曲してから攻撃すると、「わら人形論法」になってしまいます。

(例2)

男1:我が国は軍隊をもつべきである。ただしそれは徹底して防衛のためにのみ存在する軍隊であり、他国を侵略するなどもってのほかだ。

男2:あなたが筋金入りの軍国主義者だとよくわかった。他国を侵略し、無謀な戦争から抜け出せなくなった過去の反省は、あなたにはみじんも見られない。口では平和を唱え、内心では他国を侵略したいと思っているのだ。あなたは議員失格だ。

男1は他国への侵略行為には反対の立場です。なのに男2は男1を軍国主義者・侵略主義者だというレッテルを貼ったうえで攻撃しています。
侵略主義に対して攻撃を加えるのは簡単ですからね。これでは論点がまったくかみ合っていません。

「わら人形」論法は、際限なく続けることができます。
相手の主張を曲解して攻撃する。それに対して相手が見解のずれを正しても、また歪めて攻撃する。また正しても、また歪めて攻撃する…。どこまでも繰り返せます。

自分が議論の当事者になったときには、ヒートアップして「わら人形論法」になっていないか、常に確認することがとても大切です。あなたが罵り合いや自己満足でなく、建設的な議論を望んでいるならば。

 

※この記事は旧ブログ「質問学」(2012-04-27)の転載です

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