先生におれの何がわかる!〜不協和への対応法
相手がちゃんと向き合ってくれない。話すこと自体に抵抗があるようだ…そんな困った経験ありませんか。
これを動機づけ面接(MI)では「不協和(discord)」と呼んでいます。
○維持トークと不協和の違い
たとえば、生徒(話し手)と先生(聞き手)がいるとします。生徒はなかなか勉強に身が入りません。
そのとき、「毎日、帰宅して1時間勉強する」という目標にたいして、「現状維持(=勉強しない)でかまわない」という方向の発言をMIでは「維持トーク」(Sustain Talk)といいます。
具体的には、「忙しいから勉強する時間がない」「やる気がわかない」「先生に言われたら逆に意欲をなくす」…などなど。
(維持トークの例)
・「忙しいから勉強する時間がない」
・「やる気がわかない」
・「先生に言われたら逆に意欲をなくす」
それに対して、生徒(話し手)が先生(聞き手)とのコミュニケーションそのものに対して何らかの抵抗を示すことを「不協和」(discord)といいます。「周波数が噛み合わない」「ちぐはぐになる」というイメージで捉えてもかまいません。
(不協和の例)
- 議論、口論のようになる
- 無視する
- 話をさえぎる
- 「意味がない」と切り捨てる
家庭内で、思春期の子供との「不協和」に困惑している親も多いかもしれませんね。
○不協和への応答とMI集中講座
不協和への応答はいろいろありますが、一番の基本は伝え返し(複雑な聞き返し)です。
聞き手にとっては、話し手との関係がうまくいっていないと動揺するのではなく、話し手の内面を理解しようと試み、それを丁寧に確認することがキーとなります。
去年、MIの3日間集中講座に参加したとき、「不協和への応答」という項目がありました。
話し手が聞き手とのコミュニケーション自体にネガティブな対応を示すときに、どう応答するか。その練習はなかなか面白いものでしたが、私がいちばん印象深かったのは、ある司法関係の方が全員の前で行ったデモンストレーションでした。
少年院か、それに類した施設で働いている本職の方です。
(研修の内容は守秘義務があるので具体的には書きませんが)
相手(少年役)がどんなにネガティブな言葉をぶつけてきても、動じることなく柔らかに受け止める。
「それはつまり……いうこと(?)」
「……だと思っている(?)」
と丁寧に気持ちを確認していく。
野球に例えれば名キャッチャーのように見事で、私はとても感銘を受けました。
「そうか! 相手がネガティブな態度だからといって、こちらが焦る必要はまったくない。こちらがどう思われるかを気にするのではなく、相手がいま何を考え問題にしているかに集中して、それを丁寧に確認すればいいんだ」
…私はそう気づきました。
そして翌日、講座の最終日には娘のコスプレ用カツラをむりやり借りて参加しました。
周り(相手)からどう思われても気にせず、相手の内面の理解に意識を集中するいい練習に!
帰宅すると、「なんで人の持ち物をぐちゃぐちゃにするの!」娘と不協和が生じたことは言うまでもありません(笑)
(参考)
『動機づけ面接 第3版 上』(ミラー&ロルニック/星和書店)