竹内結子さんのオーディションを思い出して
女優の竹内結子さんが亡くなった。心からご冥福をお祈りします。
ごく短い時間だけれど仕事で3回お会いしたことがある。
最初は彼女がまだ16歳ぐらいで、テレビCMのオーディションにやってきた。
僕は広告会社で2年目か3年目のプランナーだったが、そのときたまたま上司が気まぐれで(?)「藤本がオーディションやれば」と言ってくれて、進行役を務めることになった。
高校生役の選抜。彼女はほかの参加者と少し雰囲気が違っていた。
「私を選んでください」という力が入ったアピールではなくて、マイペースな感じ。
僕が質問する、彼女が答える、そこに僕がひとこと感想を言う(←これが余計)。そこで彼女が少し困ったような笑みを浮かべて、しばらく沈黙が流れる。
その繰り返しで、何となくリズムが合わない。
いくつか質問を終えた僕が、外の候補者に対するのと同じように「ハイありがとうございました」と言って、次の人に移ろうとしたとたん、そばにいた上司と先輩が同時に「おいおいおい!」と声を上げた。
僕に代わって先輩が質問を始めると、彼女も元気に答えはじめて、その場の空気がガラッと変わった。
質問の仕方でこうも会話が変わるのかとびっくりした。
彼女はみごとCMに採用。
北海道のロケだったが、下っ端の僕は予算の関係で同行できなかった。
次の正月に年賀状をもらったので、記念にとっておいた。
それから十数年経って、ラジオCMの録音で再会した。
…と言っても、収録現場には大勢の人がいて、こちらも素早く進行しなければいけないので、昔の話をもちだすような雰囲気ではない。
こちらが勝手に懐かしく思うだけ…
短いセリフの録音だったが、ほとんど声を張らない静かな声だったので驚いた。
飾らないナチュラルな発声でも、マイクはちゃんと音を拾ってくれる。
この発声でいいんだ…と、ちょっとした驚きだった。
たしか翌年も同じ仕事で収録があったはずだが、それはあまり覚えていない。
3回お会いした合計はせいぜい30分程度だと思う。
一方で、ときどき彼女のニュースを見ると、あの、僕が未熟だったときのオーディションのことを思い出した。
そういえばその時、彼女はやや変わった家庭環境の話を自分からしていて、それも印象に残っているけれど、その話はネットなどで目にしたことはない。
当時もらった年賀状がまだあったので、探し出してみた。
心よりご冥福をお祈りします。
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