【書評】『マンガでやさしくわかる傾聴』〜マンガでわかりやすいだけじゃない。ふかい内容をやさしく伝える傾聴入門書

『マンガでやさしくわかる傾聴』の表紙

この本を読みながら頭に浮かんできた言葉があります。

それは小説家・劇作家の井上ひさしさんが口にしていたという言葉・・・「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」。

この『マンガでやさしくわかる傾聴』(古宮昇著/JMAM)は、まさにそんな本だと感じました。

 

マンガの舞台は「京長市役所」。個性的な市長の発案で「耳かたむけ課」という部署ができます。

「市民のあらゆる要望や苦情・悩みを何でも聞きます」という「耳かたむけ課」で、主人公の女性職員・二階堂いずみ(33歳)は、訪れる人々の対応に悪戦苦闘しながら、傾聴の本質を学んでいきます。

 

マンガの後に続く解説も親切です。私がとくに注目した部分を一つ挙げると、この本では傾聴を単なる「話をきく行為」ではなく、人間のあり方とあわせて解説しています。

傾聴の根底にある人間への信頼とは

私たちは本来の自然な自分になれば、調和を好み、人と仲よくなりたいと願い、自分の可能性を伸ばしたくなります。このように、傾聴の根底には、人間の本質への信頼があります。この信頼がなければ、「他人を、自分が思うよい方向に変えなければならない」と思いますから、相手の話を落ち着いて聞き、相手を受け入れることはできません。

(p85 太字原文)

 「人間の本質への信頼」……一部だけ読むと、「話をきくことと何の関係があるんだ?」と思われる方もいるかもしれませんが、これは実は傾聴の元祖である心理学者カール・ロジャーズが繰り返し強調していることなんですね。

それを難しい専門用語を使わずに、やさしく解説しています。

人間の本質を信頼しながら、相手の思いを受け止めて、理解したことを言葉で返す。そんな傾聴のあり方を、この本をとおして学んでみてはいかがでしょうか。

 

「傾聴って何だろう?」と興味を持った方の最初の1冊として、また傾聴をある程度学んだ人が、傾聴の本質を確認するための本として、ぜひ役立ててみてください。

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