ディベートにおける「聴くこと」の重要性
ディベート入門書の定番『はじめてのディベート』(あさ出版)の著者でもある西部直樹氏主宰の勉強会(DOS=Debate Open Space)に参加しました。
今回あらためて実感したこと。それは「相手の話をよく聴かなければ、質問も反論もできない」ということです。
○ディベートとは
「ディベート」といってもピンとこない人が多いかもしれません。また「ヘリクツで相手を言い負かす」ようなネガティブなイメージを抱いている人もいるでしょう。でもそれは間違いです。
ディベートでは、そのときどきのテーマ(論題)について、肯定側と否定側が「立論-質問-反論」を行います。ディベートは、相手の立論を質問と反論によって崩し、最後にどちらの立論が残ったかを判定する競技なのです。
(例)
【論題】日本は集団的自衛権を認めるべきである。
今回はこんな論題でした。この論題について肯定側はYes、否定側はNoの主張を展開します。自分が肯定側・否定側のどちらになるかは、くじ引きで決まります。だから、自分本来の考えとは逆の主張を展開することもありえます。
【肯定側立論の例】
- 主張:日本は集団的自衛権を認めるべきである。
- 理由:なぜなら、集団的自衛権を認めることで抑止力が強化され、日本の平和が保たれるからである。(現状は○○だが、集団的自衛権を認めることによって××が△△となり、その結果、抑止力が強化される。etc.)
【否定型立論の例】
- 主張:日本は集団的自衛権を認めるべきはない。
- 理由:なぜなら、集団的自衛権を認めることで、自衛隊員の死亡リスクおよび日本国民がテロの標的となるリスクが高まるからである。(現状は□□だが、集団的自衛権を認めることによって▲▲が◎◎となり、その結果、自衛隊員のリスクが増大する。etc.)
○立論は構造物である
上記のような立論に対して質問・反論を行います。注目したいのは、それぞれの立論が一種の構造物になっていることです。
それぞれの主張は理由・データによって支えられています。これが立論です。
この立論に対して、まずは質問によって曖昧な部分を明らかにしたり、矛盾点を浮き彫りにしたりします。そのうえで反論を行って相手の立論を崩していきます。だから質問や反論を行うためには、まずは相手の立論がどんな構造になっているのかを理解する必要があります。
相手の主張を支えている理由・データを崩すことができれば、その上に乗っかった主張も成り立たなくなります。どうでしょう。とても面白いゲームだと思いませんか?
一方、ダメな例を絵にすると、こうなります。
これはお互いがただ自分の主張を見せ合っているだけの状態です。実社会でよく見られる「噛み合ない議論」は、自分たちの主張の見せっこをして好き嫌いを言い合うだけなので、いつまでたってもまとまりません。ディベートの観点からすると、これはダメな議論の典型です。
○相手の話をよく聴こう
【ディベートの方法】
- 相手の立論(主張と理由の組み立て)をよく理解する
- 質問をつうじて曖昧な部分を明確化する
- 適切に反論して相手の立論を崩す
このようなディベートの方法は、実社会の議論でも大いに役立ちます。まずは相手の話をよく聴いて理解すること。ぜひそこから始めてみましょう。
※この記事は旧ブログ「質問学」(2015-09-29)の転載です