【書評】鴻上尚史著『コミュニケイションのレッスン』 コミュニケイションはスポーツと同じようにやればやるだけ上達する技術だ

鴻上尚史「コミュニケイションのレッスン」の表紙

劇団『第三舞台』主宰の劇作家・演出家、鴻上尚史(こうかみしょうじ)著『コミュニケイションのレッスン』(大和書房)

先日、『実写版 ドラえもん』(そんな舞台があったんです!)を観たときにロビーで購入、あとで開くとサイン入りでした(笑)

鴻上尚史のサインが入った文庫本

 

◎コミュニケイションは技術だ!

この本をつらぬく方針は「コミュニケイションは技術だ」です。

他人への声のかけ方。親しくなり方。説得の仕方。怒り方、などなど…コミュニケイションについて、多くの人は身近な人の見よう見まねでやっています。

それなのに「自分の気持ちがうまく伝えられない」「説得しようとすると言い争いになってしまう」「話そうとすると緊張していまう」などと悩むこともあります。

そうではないんです。あなたはまだコミュニケイションの技術をちゃんと学んだことがないだけなのです。コミュニケイションは野球やサッカーの技術と同じく論理的に学ぶことができる。…というのがこの本を貫く主張です。

 

◎コミュニケイションの最初の基本は「聞く」こと

この本で鴻上氏は「コミュニケイション」を次のように定義しています。

コミュニケイションとは、情報と感情をやりとりすることです。具体的には「聞く」「話す」「交渉する」という3つの技術だと僕は思っています。

情報だけではコミュニケイションとはいえない。「情報と感情の両方を伝える」ことこそが効果的なコミュニケイションになるという視点は、新鮮です。

 

そして、コミュニケイションの3つの技術のうち「聞く」が最初にきているのが面白いですね。

 最初の基本は「聞く」ことです。

なんだ当たり前だと、あなたは思ったでしょうか。

けれど、多くの人は聞きません。ただ話します。

耳が痛いです(笑)

相手の話をちゃんと聞くだけで、あなたはコミュニケイションが上手い人と思われるのです。

 

「聞く」の章は9つに分かれていて、「(落ち着きたいときには)身体の重心を下げる」など、舞台演出家らしい話も登場します。

  1. 「聞く」
  2. 「聞く」身体
  3. 「聞く」気持ち
  4. 反応する身体
  5. 「聞く」言葉
  6. 否定してはいけない
  7. 質問する
  8. 話題を作る質問
  9. 沈黙を恐れない

 

○感情が大きく動いた瞬間を見逃さない

その中で、私の心に残った箇所を1つ紹介します。質問するときのポイントとして、こんな説明がありました。

話している人の感情が大きく動いたと思われる瞬間に関する具体的な質問をすることです。具体的な質問をすることで、その瞬間を詳しく話してもらえれば、聞き手の感情も動きやすくなります。

情報だけでなく、感情に注目して質問する。それも、具体的に。…この技術が身につくと質問のクオリティもアップしそうですね。

 

○険悪になったときほど素直に聞く

コミュニケイションの3つの技術のうち「交渉する」技術として紹介されている話ですが、鴻上氏は、相手と対立したときに、まずは「素直に聞く」(素直に質問する)ことが重要だと書いています。

こっちが、勝手に相手の事情を想像して、勝手に戸惑ったり落ち込んだりムカついたりするより、まず、素直に聞けばいいのです。

その少しあとには「yes, but〜」の法則というものが載っていました。

 自分と相手の意見が対立している時に、いきなりの否定で始めず、とりあえず、相手の言葉をうなづき、受け入れ、それから自分の意志を語る、という方法です。

まったく肯定することが見つからなければ「なるほど。××という意見なんですね」と相手の言葉を繰り返すだけでも、相手は「一応、話を聞いてくれている」と、態度を軟化させます。

この場合、「Yes」は、肯定の意思表示というより、日本語の「はい」という「うなづき」や「あいづち」に近いと考えるのがいいでしょう。

相手を否定せずに受け入れる「聞く態度」は、交渉の技術としても役に立つのですね。

 

◎「聞く」ことの面白さに目覚めたきっかけ

今回ご紹介している文庫版のあとがきには、鴻上氏が「聞く」ことの面白さに目覚めたきっかけとなるエピソードも載っていました。

彼は25歳でラジオの深夜放送「オールナイトニッポン」のパーソナリティーになりました。深夜3時から2時間、たった一人で話す生放送です。

毎週、放送前日と当日に4〜5時間ずつ、ディレクター相手にネタを話します。どうすれば面白く伝わるのか、必死になって話すことで「話術」が上達しました。

その一方で、彼は当時、ディレクターと話すことに疲れて、ふだんは「聞く」ことが多くなりました。そして同時に、どんなに多くの人が、ただ「聞く」人を求めているかにも気付いたのだそうです。

 

◎まとめ

  • コミュニケーションは技術だ
  • コミュニケイションの最初の基本は「聞く」こと(例)「相手の感情が大きく動いた瞬間のことについて質問する」「険悪になったときには素直に聞く」etc.
  • 鴻上氏が「聞く」ことの面白さに目覚めたきっかけ

 

今回は、私がとくに興味を引かれた部分を中心に紹介しました。

コミュニケーションの技術について身近な言葉で学んでみたい方演劇をベースにしたコミュニケーション論に興味がある方は、ぜひ手に取ってみてください。「聞く」の章だけでも、なかなか役に立ちますよ。

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