説得するって効果的?【説得と傾聴のワーク】
最初の哲学者ともいわれる古代ギリシャのタレスは「何が難しいか」と人に聞かれたとき、こう答えました……「自己を知ること」。次に「何がやさしいか」と聞かれると、こう答えました……「他人に忠告すること」。
自分のことは棚にあげたまま、他人の欠点を見つけて忠告する。そんな経験、誰にでもあるんじゃないでしょうか。
忠告や説得が、自分が思うほどには効かないことが実感できるいい方法があります。やり方は、昨日ご紹介した「地蔵のワーク」に似ています。
【説得と傾聴のワーク】
話し手と聞き手を決めます。話し手は聞き手に2分間自分の話をします。
内容は、たとえば「いま困っていること」について。「ダイエットができない」「エクササイズが続かない」「子供が言うことを聞いてくれない」など、あまり深刻になりすぎない話題がいいでしょう。
(1回目/説得)
話し手が「いま困っていること」について話しているとき、聞き手はその話に割って入って説得を試みます。「……を試すといいよ」「……が効果あるらしいよ」「自分の場合は……だった」「大丈夫。やってみなよ」などなど。
…話し手は、どんな気持ちになるでしょうか。 私の場合だと説得されればされるほど、「この人はちゃんと理解してくれていない」という一種の疎外感を感じました。
(2回目/傾聴)
こんどは、聴き方を変えてみます。聞き手は話を聞くことに徹します。微笑みを浮かべ、うなずいたり、相づちをうったりしながら、話に興味を示して積極的に聴いてみてください。(「地蔵のワーク」の2回目と同じですね)
…こんどはどんな気持ちになるでしょうか。同じ2分が、話し手にとっては全然ちがう時間になります。私の場合は、「聴いてくれて嬉しい」「ありがとう」という気持ちになりました。
「説得」と「傾聴」。1回目と2回目の違いをぜひ体感してみてください。
この「説得と傾聴のワーク」も、15分ほどの時間でできると思います。
「自分はいいアドバイスをしているのに、相手は全然聞いてくれない」と思うことはありませんか。いちど「説得される側」の気持ちになってみると、それが最善の方法とはかぎらないことが実感できると思います。
【Q】
「説得」と「傾聴」。実際に試してみると、どちらが効果的ですか?
誤解のないよう、最後にひとつ付け加えるなら、どんな場合でも傾聴の方が説得より優れているというわけではありません。
説得と傾聴の両方の特徴を知ることで、あなた自身の選択肢が増えると考えるといいでしょう。
相手の悩みに対して(1)「説得しなきゃ」と思うのと、(2)「説得と傾聴のどちらがいいだろう」と思うのとでは、選択肢の幅がちがうということです。
道具箱の道具をひとつ増やす、というイメージかもしれませんね。
※この記事は旧ブログ「質問学」(2016-12-05)の転載です