「定形外家族」〜「ふつう」じゃない家族のかたち(REBTと動機づけ面接の活用)
大塚玲子著『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)を読了。
ここに登場する「定形外家族」とは、離婚・再婚家庭、シェアハウス育ち、両親が夫婦別姓、親がLGBT、養子、虐待、親が病気など、いわゆる「ふつう」とは少し違う形の家族のこと。
たとえば、親と血縁がないことを大人になってから知った人は、ほぼ間違いなく衝撃を受けるのだそうです。
ここではAID(提供精子を用いた人工授精)や「産院での取り違え」、また、自分の結婚を機に親から「養子」と告げられたケースが登場します。
もちろん、親と血縁がないという事実を知った後の反応はそれぞれ異なります。育ての親を信頼できなくなり、関係に亀裂が生じてしまった人もいれば、逆に育ての親への感謝が増したという人もいます。
この観点でいえば、子供が小さいうちから親が事実を告げるほうが、子供は自然に受け止められることが多いようです。
この本には様々なケースが登場しますが、ルポを貫く基本的なスタンスとしては、「みんながふつう」の社会を目指すよりも、「ふつうじゃなくても大丈夫」な社会にした方が、みんながハッピーになれる、ということでしょうか。
○家族の問題解決の選択肢を増やすこと
私がこの本を手にとったのは、たまたま「定形外家族」という言葉を目にして興味を引かれたことのほかに、動機づけ面接(MI)や論理療法(REBT)を家族の問題にも活かせる、という見通しがあるからです。
家族のかたちが「ふつう」でなくても、工夫しながらうまくやっている人たちは、私の周りにも多くいます。
その一方で、この本にも例が出てきますが、問題に巻き込まれたまま「思考が止まってしまう」ケースもあります。問題があることがわかっていても、どう改善していくかという行動に結びつかない場合。
その場合に、「傾聴しながらガイドする」動機づけ面接や「セルフヘルプのフレームワーク」としての論理療法をうまく活用すれば、「まず自分が楽になりながら、根気よく問題解決に向かう」ことができるようになります。
もちろんこれは結局、「定形外家族」にかぎることではなく、「ふつう」の家族でも同じなのではありますが。
イメージとしては、以下のようなことでしょうか。
- 「親に問題がある」と思われる場合、親を治そうとするよりも、まず子供である自分が変わることで中長期的に問題解決に取り組むことができます。
- 「子供に問題がある」と思われる場合、子供を治そうとするよりも、まず親である自分が変わることで、問題の改善をはかることができます。
- そうすると、「相手に巻き込まれる」「相手を否定する」のどちらでもない、第3の解決策「相手をほどほどに受け入れながら、問題解決をはかる」ことができるようになります。
もちろん机上の考えだけでは意味がないので、実際のケースに取り組みながら、役立て方を模索していきたいです。