MI(動機づけ面接法)で、やる気アップ!

日曜日、MI(動機づけ面接法)を一日かけて学んできました。
MIとは “Motivational Interviewing”の略で、ごく簡単にいえば、その人が「こんな風に変わりたい!」という気持ちをサポートする面接法のことです。もともとはアルコール依存症の解決策として研究され、いまでは禁煙治療やドラッグ依存治療をはじめ、ダイエットや運動のモチベーションアップ、教育分野などでも活用されています。

ぼくが参加したのは、東京都調布市でタバコ対策に取り組んでいる「ちょうふタバコ対策ネットワーク」が国立がん研究センターが協力して開催した研修会です。参加者は禁煙治療に取り組んでいるお医者さんが目立ちました。ぼくはちょっと場違いかとも思いましたが、感想を先に言えば、質の高い講座を無料で受けられて(がんセンターの研究の一環でもあるらしい)、とてもお得な一日でした。

皆さんも子供のころ、「宿題しなきゃ。宿題しなきゃ…」と思っていると、親から「宿題しなさい」と言われて、「そんなことは分かってる。うるさいな~」と逆にやる気をなくしてしまった経験はありませんか。

たとえば禁煙にしても、医者や家族からタバコの害をいくら説得されても自分がその気になれないことはよくあります。それどころか説得されればされるほど、「自分は家族(医者)に理解されていない」という気持ちが強くなることもあります。

MIは、そのような説得・アドバイス型の治療法とは反対に、その人自身がもつ「変わりたい!」「…になりたい!」という気持ちを引き出す面接法です。

「変わりたい!」が「変わりたくない」より重くなっている天秤のイラスト

MIと傾聴の共通点と相違点

MIは傾聴(ロジャーズの来談者中心療法)と多くの共通点があります。簡単にいえば、傾聴をベースに、+αの要素を加味したものといっていいでしょう。この「+αの要素」とは「変わりたい、という気持ちに着目する」ことです。

傾聴とMIとの共通点と相違点を思いつくままざっとメモしてみます。ちなみに、クライアント(来談者)とは、要するに、「話し手、患者」のことです。カウンセリングの現場では「患者と医者」という関係ではなく、一種対等な立場で「クライアント(来談者)=話し手」と「カウンセラー=聞き手」が対面します。

共通点

  • クライアント(CL)を肯定的に受け入れる受容的態度
  • CLに「答え」を押しつけない、アドバイスしない非指示的スタンス
  • CLに温かい関心を寄せ、その言葉に丁寧に耳を傾け理解する共感的理解(≒傾聴)
  • CLの話には評価・ジャッジを下さない
  • CLの「感情/気持ち/思い」が込められたフレーズを確認・理解し「カウンセラーがCLを理解している」ことをCLと共有する
  • 「うなずき・相づち」「伝え返し」「要約」などのスキルを用いる

 

相違点

  • CLの「感情/気持ち/思い」がこもった言葉を、MIでは「維持トーク」と「チェンジトーク」に分類する。そして、「このままではダメだと思っている」「…したい」などの「チェンジトーク」に焦点を当て、重みをつけ、強化していく。
  • CLの自発的な変化をうながすために「開かれた質問」を積極的に用いる

 

傾聴とMIの特徴

傾聴とMIの特徴をごく大まかにいえば、次のように言えるかと思いました。

  • 傾聴:CLを受け入れ、理解し、その理解を共有することで、CLに好ましい変化が生じる
  • MI:傾聴をベースにしながら、「好ましい変化」を促進する気持ちに焦点をあて、強化する

 

MIが特に効果的な場面

  • 「禁煙」「アルコール依存の克服」「子供のやる気アップ」など、目指したい方向性があらかじめ分かっている場合
  • 医者と患者などの関係において、従来型の「説得/アドバイス」より成果をだしたいとき

ざっとしたメモ書きですが、いかがでしょうか。

 

ひとりMIを試してみた

あと面白かったのは、帰宅してから自分で「ひとりMI」を試してみたことです。

僕は先週から「本が書きたい」モードになっているんですが、まずそれを題材にひとりMIをやってみました。3分ぐらいになるかなあ、と思ったら10分ほどになりました。

・本を書くことについて、思っていること(動機・内容・不安etc.)を声に出して話す

・その思いを理解しながら(自分なので当たり前だ!)、チェンジトークに焦点を当てオープンクエスチョンで問い返す

・「本を出版したらどんないいことがあるか」など、言葉に出して明らかにしながら、その「思いのベクトル」を承認・強化する

・最後に、「今すぐできること」「今日できること」を確認する

…みたいな方法で。

やってみると、いくつかのことがわかりました。

  • 研修のワークでは恥ずかしさもあって躊躇してしまうことでも、ひとりMIなら、どんどん口に出してもOK
  • 「本を書きたい」という動機は「自分が認められたい」という自己承認的なものと、「人や社会のために役に立ちたい」という価値創出的なものがある。このうち後者にフォーカスを当て、重みをつけていくことで、「…したい」という欲求がいい形で強化される。
  • 2007年の『笑って禁煙できる本』からどう別のことをやろうかと迷っていたのが、意外と共通した考えで進めていけることがわかった。(「発見を共有したい」「人の役に立ちたい」「…の状況を変えたい」etc.)
  • カウンセラー役のときは、最初に「閉じた質問」が浮かびがちだけど、それを「開いた質問」に変換することで、対話の可能性が広がっていくという実感が得られた。

 

声に出して行う「ひとりMI」は数分~10分あればできるので、これからいろいろ試してみようと思います。

(1)「行動したい気持ち」「躊躇する気持ち」の言語化

(2)「行動したい気持ち」の確認・強化

(3)「まずできる第一歩」の言語化

要するに3ステップなので、それを意識してひとりロールプレイをやると、「もやもや→やる気」モードに切り替えやすいと思いました。

「ひとりMI」はちょっとしたお遊びだとしても、MI(動機づけ面接法)のメソッドは傾聴と並んで、日常生活でもいろいろと役立ちそうです。

 

※この記事は旧ブログ「質問学」(2016-10-18)の転載です

 

 

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