傾聴の元祖!ロジャーズとグロリア〜内的な世界を一緒に探索する

今月は自宅で過ごす人も多いのではないでしょうか。

これまで当たり前のように人に会っていたことが当たり前でなくなる、その一方で家族と長く過ごす時間があったり、オンラインの新しい繋がりができたり、コミュニケーションについて新しい視点を取り入れる機会にもなりそうです。

さて、私は以前から気になっていたカール・ロジャーズのカウンセリング動画を見てみました。有名な「グロリアと3人のセラピスト」のうちのロジャーズの部分です。動画を見ながら英語のトランスクリプトを読んでいったのですが、「こんなコミュニケーションの方法があるのか…」と静かな驚きに包まれました。

もちろんロジャーズの方法については知っているのだけれど、あらためて感動。

傾聴の元祖!ロジャーズとグロリア〜内的な世界を一緒に探索する


冒頭、ロジャーズは3つのことが大切だと言っています。1つ目は関係においてリアルであること。つまり隠し事なく透明性をもって相手に向かうこと。2つ目は相手をひとりの人間として尊重し受け入れること。そして3つ目は相手の内的な世界を理解しようと試みること。

(関連記事)ロジャーズが語る傾聴の方法〜5つの条件とは?

そして、30分の短いセッションのなかで見事にそれを実践しています。

グロリアは離婚して間もない女性です。家の外に付き合っている男はいるけれど、子どもたち、特に9歳の娘に会わせてもいいものか迷っています。付き合う男たちが尊敬できるタイプならいいのですが、実際にはもっと軽薄な男たちです。

自分が子供のころ両親の性的な関係を知って嫌悪感を抱いたこともあり、娘への影響が心配です。かといって娘の前で「いいお母さん」を演じ続けるのも、娘に嘘をついているという罪悪感がある…

グロリアは自分がどう行動したらいいか答えを知りたいのですが、ロジャーズが答えを与えることはありません。彼女の話に耳を傾けながら、彼女が言いたいことを確認したり、実はこうなのではないですかと質問をしたりして、彼女自身の内的な世界を明らかにしようと試みます。

そしてグロリアの、娘にとって「完璧な母親」であるべきなのか、それとも自分に正直であるべきなのかという葛藤は、しだいに過去の父親との関係と重なっていきます…。私に完璧さを求めていたのは父親だった。その父親は決して私の話に耳を傾けてくれることはなかった…と。

セッションの中でグロリアはロジャーズに「自分を理解してくれる父親」の姿を求めて、ロジャーズがそれに正直な反応を示したりも…

ちなみに、ここに登場するグロリアはこの撮影から15年ほど後に亡くなるのですが、それまでロジャーズとの年に1度か2度の文通が続いたのだそうです。(クライエントとセラピストの関係としてはイレギュラーですが)

○内的な世界を一緒に探索する

ロジャーズの方法は、自分から答えを与えることなく、クライエントの内的な世界を一緒に探索するというものでした。これは他には見られないラディカルなコミュニケーションだと私には思えました。

普通は、相手が答えを求めていたら、いろんな情報や自分の体験からアドバイスしてあげたくなりますよね。

ロジャーズの方法がいつも最良かどうかは別として、初対面の人間同士がまったく対等な立場で心の中を探索する姿に、その究極ともいえる方法に、私は静かな感動を覚えたのです。

ロジャーズとグロリアの映像

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