傾聴/動機づけ面接〜なぜ質問より聞き返しを多く行うのか?
傾聴/動機づけ面接の基本スキルOARSには「開かれた質問(Open Question)」も「聞き返し(Reflection)」もありますが、実際のセッションではなるべく聞き返しを多く用います。これはなぜなのでしょうか?
たとえば、「私はもっと社交的になれたらいいと思います」という言葉にも、いろんな意味が考えられます。
- 「孤独を感じていて、もっと友人がほしいんです」
- 「知らない人と話さねばならないときは、とても緊張してしまいます」
- 「大勢の人の考えを知るために、もっと時間を費やすべきです」
- 「人気者になりたいです」
- 「人と一緒にいるときは何を言っていいのか考えつきません」
- 「私はパーティーに招待してもらえないのです」
などなど。(参照:動機づけ面接 第3版)
この場合、話し手の言葉の意味を確認するためには、「開かれた質問」と「聞き返し」のどちらも用いることができます。
- 「社交的になれたらいいのはなぜですか?」(開かれた質問)
- 「社交的になれたらいいというのは、もっと友達がほしいということ…」(聞き返し)
では、なぜ聞き返しのほうが望ましいのか?
「OARSで学ぶ傾聴教室」でこの話題がでたので、質問と聞き返しでどんな違いがあるか、私が聞き手になって試してみました。
1回目は、連続して質問を行います。
2回目は、連続して聞き返しを行います。
両方をやってみたあと、話し手をしてくれた参加者に感想を聞くと、とても面白い答えが返ってきました。
1回目、「質問」ときは、答えを1から考えなければならないので答えるのにエネルギーが必要だった。
それに対して2回め、「聞き返し」のときは、言われた言葉をきいて、その違っているところ、ずれているところを修正すればいいから、楽に話すことができた。
いかがでしょうか。
連続して質問をされると、答えを自分で1から考えるので、エネルギーがいります。
「答えなきゃ」というプレッシャーも感じるし、それが続くと疲れます。
それは、話し手が自分一人で作業を強いられるようなものかもしれません。
一方、聞き返しのときは、聞き手が「あなたの気持ちや考えは◯◯でしょうか」という感じで「仮説」を提示してくれるので、それに対して「そうそう」「そうなんです」と確認したり、「いや、そうではなくて……」と修正すればすみます。だから余分なエネルギーを使わずに話を進めることができます。
つまり、より共同作業的になります。
だからこそ、傾聴/動機づけ面接では、聞き返しを多くもちいながら話し手の内面的な世界を一緒に探索していくのですね。
◯OARSで学ぶ傾聴教室
「OARSで学ぶ傾聴教室」では、いま世界で普及してきている動機づけ面接をベースにした最新の傾聴を学ぶことができます。
(感想から)
・今日は質問と聞き返しの違いを実際に相談者役をやることで、よく分かりました。
・複雑な聞き返しのパターンで、相手の話の理由を考え、その理由にフォーカスした聞き返しをするというのは難しそうだと感じました。けれど、この聞き返しができると相手の内面をより深く知ることができるし、相手の話もより注意深く聞けるようになりそうです。
・質問ばかりだと、質問攻めみたいな感じになっていき、話す方は一から思考しなくてはならないが、聞き返しを繰り返すことで、聞き手も話し手も会話のリズムやテンポがよくなり、オープンクエスチョンでより思考が深まると感じました。
毎月第1・第3火曜の夜にオンラインで行っていますので、ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。
また、傾聴の教材動画も月に2回アップしていきます。こちらもぜひご活用ください。
藤本祥和(ハートのフィットネスクラブ主宰、REBT心理士、動機づけ面接トレーナー)