親がやりがちな傾聴にならない12のロードブロック(1〜6)トーマス・ゴードン
先日、オンラインで行っている「OARSで学ぶ傾聴教室」で「トーマス・ゴードンによる12の障害物(ロードブロック)」を扱いました。
カール・ロジャーズの弟子であり、「親業」(Parents Effectiveness Training)や「I(アイ)メッセージ」でも有名なトーマス・ゴードン博士による、「聞くこと」とは呼べない12の障害物についてです。
親が子供にやりがちな12のロードブロック
- 命令する・指示する
- 警告する・脅かす
- 助言する、解決策を与える
- レクチャーする、論理的に説得する
- 道徳的に教化する、すべきことを伝える
- 判断する、反対する、批判する
- 褒める、同意する
- あざける、レッテルを貼る、恥をかかせる
- 解釈する、分析する
- 質問する、探りを入れる
- 安心させる、同情する、慰める
- 撤回する、ごまかす、話題を変える
これらを振り返ることで、そうではない「傾聴する」ことがどうすることで、どんな効果があるかが明確になります。
そのワークショップ用に、私は、ごく簡単ながら12のイラストを描いてみました。
せっかくなので、そのイラストを使って、この12の障害物について、例と簡単な説明を紹介します。
12のロードブロックのうち、まずは前半の6つから。
(1)命令する・指示する
「黙って行きなさい」
「身体をもぞもぞ動かさないで」
「それに触っちゃダメ。向こうに行って」
※子ども自身が感じたり考えたりしていることは大切ではなくて、とにかく親に従わなければならないというメッセージを与えてしまう。
(2)警告する・脅かす
「そんなことしたら、きっと後悔するよ」
「すぐに寝ないと、お尻を叩くよ」
「その太鼓叩くのをやめないと、本当に怒るからね」
※子どもは親を怖れ、言いなりになる。あるいは反発するかもしれない。
(3)助言する、解決策を与える
「ほかのことを考えたらいいよ。ほら、絵でも描いたらどう?」
「まずは1日5分から始めてみたら?」
「英語は好きな音楽の歌詞で覚えれば楽しいよ」
※親が子供の判断や能力を信頼していない証拠になる。子どもが自分の頭で考えることをやめてしまう。
(4)レクチャーする、論理的に説得する
「あと3ページだけやればいいって、分かってるよね」
「1日30分やれば2週間で終わるだろ?」
「学校に行けば、大変なこともある一方で、楽しいこともきっと見つかるよ。そういうものだよ」
※子供は自分自身で考えることに劣等感を抱いたり、また逆に、反発したりするかもしれない。自分の間違いを認めたくないことも。
(5)道徳的に教化する、すべきことを伝える
「本当にいい子は泣いたりしないし、言うことをきくものよ。学校に行けるなんて幸せなことなのよ。よろこびなさい」
「先生の言うことは素直に聞く。普通はそうだよね」
「好きなことばかりじゃなくて、つまらないことも頑張る。それが人生を豊かにするんだよ」
※子供に外部の権威者や義務のプレッシャーを与えることになる。子供自身の判断を信頼せず、他の「正しいこと」に従うべきというメッセージも。
(6)判断する、反対する、批判する
「もう、今日ここに来ている中でいちばん悪い子だね」
「それは自分が努力しなかったからだろう。甘えてるんじゃないよ」
「その考え方は間違っているだろう」
※子供の自己認識は親からの判断や評価によって形成される。親が子供にネガティブな評価をすると、子供も自分をネガティブに評価するようになる。あるいは、批判されれば、怒ったり憎しみを抱くこともある。
…いかがでしょうか。
子供が何か問題を抱えていそうなときに、ついついしてしまいそうなこれらの反応、心当たりがあるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。あるいは、自分が子供のころ感じたことを思い出してみてもいいかもしれませんね。
また、これはもちろん子供だけでなく、大人同士のコミュニケーションにも通じるところがあるはずです。
ぜひ参考にしてみてください。
次回は残りの6つを紹介します。
→「親がやりがちな傾聴にならない12のロードブロック(7〜12)トーマス・ゴードン」
(参考図書)
- 『ゴードン博士の人間関係をよくする本』(トーマス・ゴードン著・近藤千恵訳/大和書房)
- Parent Effectiveness Training: The Proven Program for Raising Responsible Children | Dr. Thomas Gordon
- 『動機づけ面接 第3版』(ミラー&ロルニック著、原井宏明監訳/星和書店)
- LISTENING WELL THE ART OF EMPATHIC UNDERSTANDING | WILLIAM R. MILLER
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