対人援助職が傾聴において要約スキルを学ぶ意味
今月の「OARSで学ぶ傾聴教室」のテーマは「要約(サマライズ)」。
いい機会なので、対人援助職(または、家族や友人などを支援したい人)が要約のスキルを学ぶことの意味をまとめてみました。
◯要約(サマライズ)の定義
ここでいう「要約」(サマライズ)は「話し手の2つ、またはそれ以上の発言内容をまとめて返す聞き返し(reflection)」のこと。話し手の感情も含めて、いくつかのポイントを短くまとめて伝え返します。
(ちなみに、ロジャーズの用語reflectionには「反射」「繰り返し」「伝え返し」「聞き返し」など様々な訳があります)
(例)(複雑な関係にあった親が亡くなった人のいくつかの発言に対して)「お母さんが亡くなって、悲しい気持ちと、ほっとした気持ち、いろんな連絡が面倒だという気持ち、それから、将来の不安がおありなのですね」と、理解を伝え返す。
◯クライエントの発言と時間の流れに対して
クライエントの発言と時間の流れに対して、通常の聞き返しと要約を図にすると、次のようになります。
◯「CLが変化するポイント=自分自身に気づく」ことに対して
クライエント(CL)の変化にとって重要なのは、クライエント自身が自分自身の内面に気づくこと。カウンセラーはそのサポートをします。協働作業。
このとき、「フォーカシング」のユージン・ジェンドリンや、来談者中心療法のカール・ロジャーズは「今、ここ」の内的経験を感じることを重視。
一方、状況や感情を紙に書き出して整理することも、自分を知る上で効果的。一種の「地図づくり」です。
要約は、「今、ここ」と「地図作り」の間にあるといえるかもしれません。
◯対人援助職が要約スキルを学ぶ意味
対人援助職の皆さん、また、家族や友人、地域のコミュニティで誰かをサポートしたい方々は、クライエントが自分自身の内面に気づく手助けをする1つの方法として、傾聴における要約もぜひ練習することをお勧めします。
(※ちなみに、クライエントの変化をサポートする最新の技法として世界的に普及してきている動機づけ面接=MIにおいてはこれに加えて、チェンジトークの促進という大きな役割が加わります)
藤本祥和(ハートのフィットネスクラブ主宰、REBT心理士、動機づけ面接トレーナー)