カウンセリングにおける自己開示の基準〜MIとREBTの場合
最近何度か、プロのカウンセラーの方々とある話題について話すことがありました。
その話題とは「自己開示」。つまり「カウンセリング中に、カウンセラーが自分のプライベートな体験を話していいか」について。
興味深いことに、僕が話を聞いたカウンセラーの皆さんには共通点がありました。それは「一般には、カウンセラーが自分の個人的な話をすべきではないと教えられているけれども、自分は行っているし、それでいいと思っている」ということでした。
カウンセリングでは通常、クライエントが話す側、カウンセラーが聴く側となります。一報、カウンセラーが自分の経験談を提示するのときにはそれが逆転するわけですね。
これはどう考えればいいのでしょうか?
カウンセリングにおける自己開示の基準〜MIとREBTの場合
○インタビューと居酒屋
まずはカウンセリングの現場を離れて、極端な例で考えてみましょう。
同じように個人的な話でも、状況によって受け取られ方は大きく異なります。
インタビューの場合だと個人的な話は大歓迎でしょう。その人の話を興味深く聴くことが前提となっている場ですから。
一方、居酒屋で上司の体験談を聞くこと。これはビミョーで、「もーうんざり」と言う場合もありそうですね。
だけど場合によっては、その上司のことを尊敬していて、「個人的な経験談もどんどん聞きたい!」というケースもあることでしょう。
ここでのポイントは何でしょう。
それは話の内容そのものではなく、「話し手の個人的な話を聞きたいと思っているかどうか」なのです。
どんな些細な話でも、話し手に興味を持っていれば聞きたくなります。逆にどんなにいい話でも、話し手に興味を感じなければ、つまり聞く態勢になっていなければ、耳に入ってこないのです。
これがわかれば、カウンセリングにおける基準も見えてくるはずです。
○カウンセリングにおける自己開示の基準
MIの場合
「傾聴しながらガイドする」コミュニケーション技法である「動機づけ面接」(MI)では、自己開示に関するガイドラインが示されています。(この場合の自己開示は、単に昔話を話すことではなく、カウンセリングのその瞬間にカウンセラーの心に浮かぶ内容をクライエントに伝えること)
カウンセラーが自己開示する場合でも、そのフォーカスはつねにクライエントに当たっていることが大切です。カウンセラーの経験を伝えることが、クライエントに役立つという確かな理由があるかどうか。
たとえば、その話をすることがクライエントとカウンセラーの信頼関係を向上させるとか、クライエントの質問に答える場合(「先生にもお子さんはおられるのですか?」「こんな気持になることは先生にもありましたか?」など)ですね。
REBTの場合
REBT(論理療法)には、カウンセラーが問題を克服した経験をクライエントに伝える「自己開示的スタイル」があります。
こちらも、あくまでクライエントファーストです。
フォーカスはクライエントが抱えている「見えない壁」(不健康な思い込み、イラショナルビリーフ)に当たっています。その「見えない壁」を克服するという目的において、カウンセラーは自分の体験談(どうやってその「見えない壁」を克服したか、など)を伝えるのです。
○まとめ:自己開示は「クライエントファースト」で
カウンセリングにおいて、話し手と聞き手が一時的に逆転する「カウンセラーの自己開示」。その場合でも、つねにクライエントファースト。フォーカスはクライエントに当たっているということですね。
それがわかれば、「どのタイミングで言うか」「いきなり伝えるのではなくどんな前フリが必要か」「どの程度詳しく言うか」なども見えてくるのではないでしょうか。
また、このことはカウンセリングの現場だけにかぎらず、日常生活のコミュニケーションでも応用が効くと私は思います。参考になさってみてください。