ミラクル・クエスチョンで「ちょっといい未来」!〜解決志向ブリーフセラピー(REBTとの共通点/相違点)

先日、精神科医の方と雑談する機会がありました。

心理療法についての話をあれこれ伺ったのですが、その中で興味を引かれたのが「ブリーフセラピー」

「ブリーフ」と言っても「あなたはブリーフ派? それともトランクス派?」の男性用下着じゃないですよ(笑)

「brief=短時間で、効率的に」というイメージでしょうか。

私の周りにもブリーフセラピーに詳しい人が何人かいますが、具体的な内容は知らないままでした。

ところが今回、精神科医の先生から「ブリーフセラピーは論理療法と逆だからやってみると面白いよ」とオススメが!

「論理療法と逆」って何? さっそく本を買ってみました。

「解決志向ブリーフセラピー」

ミラクル・クエスチョンで「ちょっといい未来」!〜解決志向ブリーフセラピー(REBTとの共通点/相違点)

○ゴールからイメージする「ブリーフセラピー」

論理療法とブリーフセラピーは何が逆なのでしょう?

論理療法では問題の「原因」を探します。

一方のブリーフセラピーは「原因」についてはスルーして、問題が解決した未来のイメージを組み立てます。

(※注:ここではブリーフセラピーの中でも「解決志向ブリーフセラピー」について触れています。)

例を挙げてみましょう。

(スピーチが苦手な人)

Aさんは来週、100人の前でスピーチしなければなりません。

だけど「失敗したらどうしよう…」「評価が低かったら困る…」と、不安でいっぱいです。

スピーチの準備に身が入らないまま、刻々と本番の日が迫っています。

さて、こんなケースで論理療法とブリーフセラピーのアプローチはどう違うのでしょうか?

○論理療法

論理療法についてはこれまで何度も記事にしているのでごく簡単に書きますが、「不安」の原因となる「思い込み」を特定します。

Aさんはたとえば「絶対に失敗すべきではない。もし失敗したらお終いだ」と思い込んでいる可能性があります。

もしそうだとしたら、「仮に失敗したとして、それは本当に人生の/世界の終わりなのか?」「その思い込みを抱えていることが、スピーチに臨む目標に向けて助けになるかどうか?」などをチェックします。

そのうえで、もっと現実に即した、目標への助けになる考えに変えることを試みます。

言ってみれば、目標への道を遮る「ベキの壁」を発見して、そこに通り道を作ってあげるイメージでしょうか。

イラスト「ベキの壁」に通り道を作る

○ブリーフセラピーと「ミラクル・クエスチョン」

一方のブリーフセラピーでは、原因には立ち入らずに「ゴール=未来の姿」を明確化します。

ここでは「ミラクル・クエスチョン」という面白い質問法を紹介しましょう。

イラスト。スピーチが上手くいっている。

スピーチを来週に控えて不安でいっぱいのAさんに、こんな質問をしてみます。

「もしも奇跡が起きて、朝、目が覚めるとその不安がすべて解消しているとします。その『奇跡の一日』は、今と何が違いますか?」

そしてその「奇跡の一日」をなるべく詳しくイメージしていきます。

「100人の前のスピーチ」だとしたら、どんな感じでしょうね?

たとえば

  • 十分な準備をして「やれることはやった」という満足感がある。
  • 聴衆をゆったり見渡して、アイコンタクトが取れる。
  • 堂々としたボディランゲージで伝えている。
  • たとえ言い間違えても、ひと呼吸し、笑みを浮かべて続ける。

などなど「(問題が解決した)奇跡の一日」を詳細にイメージします。

そして、その「奇跡の一日」と「今」とは何が違うかを具体的に考えます。

今までなら原稿を読むのに精一杯だったけど、「奇跡の一日」では「聴衆とアイコンタクトが取れている」…そんな気づきがありそうですね。

そうして「いい未来の明確化」を入り口に、行動を変えていくのが「ブリーフセラピー」のアプローチです。

○「いい未来」に近づく3つのルール

「いい未来」に近づく方法としては、3つのシンプルなルールがあります。

<ルール1> もしうまくいっているなら、変えようとするな。

<ルール2> もし一度やって、うまくいったのなら、またそれをせよ。

<ルール3> もしうまくいっていないのであれば、(何でもいいから)違うことをせよ。

「100人の前でスピーチ」だったら、どうでしょう。

私なら「いい未来」と「現在」の違いのひとつである、アイコンタクトの練習をしてみるかもしれません。

「それがうまく行きそうなら続ける。うまくいかないなら、何でもいいから別のことを試みる」という具合でしょうか。

○論理療法との併用は?

論理療法とブリーフセラピー。アプローチする方向は逆ですが、セルフヘルプとしては十分併用できそうな気がしました。

もちろんカウンセリングの場ではメインの方法を選択しなければならないわけですが、たとえば子供が対象だと、「いい未来」をイメージさせるブリーフセラピーが有効なケースも多いように思います。

私の知人で論理療法とブリーフセラピーの両方を扱っている先生もいるので、機会があればいろいろ聞いてみたい気がします。

あなたはブリーフ派? それともトランク…いや、論理療法派?

「いい未来」からイメージするブリーフセラピーと「ミラクル・クエスチョン」、どうぞ参考になさってください。

(参考)

『<森・黒沢のワークショップで学ぶ> 解決志向ブリーフセラピー』(森俊夫・黒沢幸子著/ほんの森出版)

『基礎から学ぶ心理療法』(矢澤未香子/ナカニシヤ出版)

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