REBTの「B=ビリーフ」ではない話と「家族のセルフヘルプ」への適用
ネットで「REBT」「論理療法」などについての解説を読むと、ほぼ間違いなく「ビリーフ」というキーワードが登場します。
(論理療法のABCモデル)
A(できごと):SNSで批判された。
B(ビリーフ):批判されたら、自分には価値がない。
C(結果):落ち込み/SNSに投稿できない。
できごと(Activating Event)が結果(Consequences)を生むわけではなくて、B(Belief)が関わっているというのが、論理療法の基本的モデルで、またこのフレームは他の認知行動療法にも取り入れられています。
ところが先週アルバート・エリス研究所認定のアドバンスドコースをムンバイで受講して驚きました。
レジェンドともいえるドライデン先生の授業では、なんとこの「ビリーフ」という言葉が使用されていなかったのです。
REBTの「B=ビリーフ」ではない話と「家族のセルフヘルプ」への適用
代わりに attitude(態度、考え方)という言葉が使われていました。
つまり論理療法におけるABCモデルのBは “Basic attitude”(基本的態度)”というわけです。
なぜでしょうか?
Beliefという言葉は宗教を始めいろんな意味で使われて曖昧なところがあるので、「できごと(A)」の捉え方/考え方という意味では「B=Basic attitude」がより適切だとドライデン先生は考えているようです。
いやはや。用語も変わってくるものですね。
○B=Basic attitude(態度/ものの見方)を使った論理療法の戦略
それを踏まえて論理療法の方法をおさらいすると、ざっと以下のようになります。
(1)A(できごと)とC(感情や行動の結果)を特定し、ゴールを決める
A(できごと)
- SNSで批判された。
C(結果)
- 感情:落ち込み
- 行動:もうSNSに投稿できない
ゴール
- 感情:「落ち込み」→「落ち込むまではいかない悲しい気持ち」
- 行動:「SNSに投稿できない」→「SNSに投稿できる」
(2)B(態度/ものの見方)を特定し、より柔軟な B’を用意する。BかB’はクライエント自身が選ぶことができる
B:「批判されたら、もう私には価値がない」
B’:「批判されるのは望ましいことではないけれど、もし批判されたからといって、私の価値が変わるわけではない」
(3)クライエントがB’(より柔軟な態度)を選ぶことができたら、それを定着させるためにサポートする
宿題など
いかがでしょうか。もちろん今までどおり「ビリーフ」を使っても構わないのですが、私には「Basic attitude=基本的態度/ものの見方」という用語はなかなかしっくり来るものでした。
またD(dispute 論駁)についても、「頑なな態度/ものの見方」と「柔軟な態度/ものの見方」という2つの選択肢を示して、クライエントが自ら選べるようにすることも、特徴的なスタイルだと感じました。
○「家族のセルフヘルプ」への適用
私がいま取り組んでいる「家族のセルフヘルプ」においても、この「B=態度/ものの見方」という用語はよく合うようです。
いま問題解決の仕組みづくりのためにリサーチ中ですが、一般の人に説明する場合でも、「ビリーフ」だとやや宗教めいた雰囲気が漂います。
ところが「あなた自身の基本的態度/ものの見方が感情に影響を与える」という説明なら、日常用語のままで進められる利点があります。
○論理療法の効果
ついでにいえば、いまリサーチしているところでは、問題が複雑に、またシリアスになるほど論理療法のABCモデルが力を発揮する傾向があります。
30分程度話すだけで、複雑な問題(のなかで中心として扱いたい部分)をABCのフレームで整理しながら、より柔軟な選択肢を示すことができるスピーディーさが論理療法の特徴だといえそうです。
○「家族のセルフヘルプ」の方法
「家族の問題で困っている人」が一方にいて、「問題解決のメソッド」が一方にあります。これを繋ぐ方法としては、大きく4つの方法を考えています。
- ブログや本などの情報発信
- 「哲学カフェ」など講義、ワークショップ
- 個別のカウンセリング
- セルフヘルプの方法を継続的に学べるシステム(「フィットネスクラブ」のイメージで)
(1)〜(3)にも手応えが得られてきていますが、やはり(4)の仕組みづくりがプロジェクトの核になりそうです。
今はリサーチ期間でもあるので、「この問題に論理療法を適用するとどうなるの?」というような興味があれば、気軽にお問い合わせくださいませ。