REBTと「無条件の自己受容」〜「自己肯定感」にご用心。「ビッグI」と「スモールi」
最近「自己肯定感」という言葉をよく聞きます。「自己肯定感を高める」って何だかよさそう〜。でもこれ、上手く使わないとちょっと危なっかしいんです。
REBTと「無条件の自己受容」〜「自己肯定感」にご用心。「ビッグI」と「スモールi」
危なっかしいのは「とにかく長所をたくさん見つけて、自己肯定感を高めよう」など、「自己肯定感」を「自尊感情 self-esteem」や 「自己効力感 self-efficacy」と同じように捉える場合。
長所を発見すること自体はいいのですが、それを「自己への肯定的評価」と連動させるのはキケンです。次の図を見てみましょう。
横軸は左がネガティブな状況(失敗)で、右にいくほどポジティブな状況(成功)になります。一方、縦軸は上にいくほど自己評価が高まります。
もしもあなたがこの図の赤いラインのように「成功すればするほど自己評価が高まる」という図式を採用するとどうなるでしょう。
それは同時に「失敗すればするほど自己評価が低下する」ことを意味します。
人から拒絶されたり試験に落ちたりするなど、うまく行かないことが続くと、自己評価も左下に滑り落ちていきます。
長い人生いいことばかりは続きませんから、自己評価も上がったり下がったりと必然的に不安定になります。
ならば、どうすればいいか?
○ビッグI(アイ)とスモールi(アイ)〜無条件の自己受容
自己を不安定にしないためには、「成功/失敗」と「自己の価値」を連動させることをやめる必要があります。
私がオススメするのは「ビッグI(アイ)とスモールi(アイ)」という考え方です。
「ビッグI」は「あなた自身(の価値)」です。
一方、「スモールi」は「あなたに関する評価可能なことがら」です。容姿、身長、年齢、仕事、財産、パートナーの有無、チャリティーに寄付するかどうか…など何でも。
「スモールi」はそのときどきで上手く行ったりいかなかったりします。それはそれで「よかった」「わるかった」と評価してかまいません。ただしこれを「ビッグI=あなた自身」と混同しないことが肝心です。
この「ビッグI」は「無条件の自己受容」(Unconditional Self-Acceptance)を表しているとも言えます。
どんなに失敗が続いても、人から拒絶されても、あなた自身の価値は変わらないということ。「生きているだけで自分には価値がある」と無条件で受け入れることです。
○「自己肯定感」にご用心
「自己肯定感」という言葉は、人によって使われ方が違います。
「上手くいってもいかなくても、自分を受け入れる」という意味ならいいですが、「長所をたくさん見つけて自分の価値を上げること」と思っていると、落とし穴にハマる危険があります。
その意味では「ビッグI(アイ)とスモールi(アイ)〜無条件の自己受容」を覚えておくこともオススメですよ。
(参考文献)
“A PRACTITIONER’S GUIDE TO RATIONAL EMOTIVE BEHAVIOR THERAPY”(R.Digiuseppe/K.Doyle/W.Dryden/W.Backx)
『認知行動療法に学ぶコーチング』(ニーナン&ドライデン著/東京図書)