REBTと動機づけ面接・傾聴の視点から:コロナ離婚予防法〜2つの「分ける」と1つの「聞き分ける」
Stay Home, Stay Safe
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。新型コロナ感染拡大を受け、自宅で過ごす時間が長くなることで「DV増加」「コロナうつ」「コロナ離婚」などの問題も聞かれるようになりました。
どうすれば、非常時でもそこそこに落ち着いて過ごすことができるか…
REBTと動機づけ面接・傾聴の視点から:コロナ離婚予防法〜2つの「分ける」と1つの「聞き分ける」
今回は、論理療法(REBT)と動機づけ面接(MI)を家族の問題解決に活かす「家族のセルフヘルプ」の視点から、2つの「分ける」と1つの「聞き分ける」という対策をご紹介します。
- 問題の種類を2つに分けるーー実用的問題と心理的問題
- ネガティブな感情を2つに分けるーー健康的と不健康
- 傾聴で聞き分けるーー相手の世界と自分の世界
順番に説明します。
○問題の種類を2つに分けるーー実用的問題と心理的問題
コロナで仕事が減る、なくなる、先が見通せないという方もいるかもしれません。
「仕事を何とかする」「お金を何とかする」…これはすべて「実用的な問題」になります。
一方、「仕事がなくて不安」「行政の対応が不十分で腹立たしい」というとき、「不安」「腹立たしい」は「心理的な問題」です。まずはこの2つを区別しましょう。
(1)実用的問題…「仕事を何とかする」「お金を何とかする」
(2)心理的問題…「不安」「腹立たしい」
(1)の解決には根気よく取り組む必要があります。魔法のように仕事やお金が降ってくるわけではないのでタイヘンです。
とはいえ、(1)が必ずしも(2)の心理的な混乱を引き起こすわけではありません。(2)は自分でコントロールすることができます。
「不安でしかたがない」状態から「たしかに気がかりだ。でも何とかやっていこう」という状態へ。
「怒りが押さえられず周りに当たり散らしてしまう状態」から「ムカつくけど、まずは自分でできることに取り組もう」という状態へ。
(2)の心理的問題を解消することができれば、(1)の実用的問題にも根気よく取り組めるようになります。
○ネガティブな感情を2つに分けるーー健康的と不健康
Stay Home, Stay Safe!
「自宅にいなければいけないこの機会に、今までできなかったことを始めてみよう」…新しい趣味、技術の習得、語学や運動などの習慣づくり、仕事のアイデア、家族との触れ合い、などなど。状況をポジティブに捉え直すことはいいことです。
ただし気をつけなければいけないのは、「すべてのネガティブをポジティブに変えようとすると無理が生じる」ということです。
コメディアンの志村けんさんが急逝し、大きなニュースとなりました。
日本人なら誰もが知っている有名人の不幸から私たちが教訓や学びを得ることは可能です。とはいえ、有名人や知人を襲った不運を無理やりポジティブに捉えなおす必要はありません。悲しいニュースは悲しいニュースとして受け取ればいいのです。
必要なのは、ネガティブな感情を必ずポジティブに変換することではなく、ネガティブな感情を日常生活に差し障りがでるほどエスカレートさせないことです。
論理療法ではネガティブな感情を2種類に分けます。
- 健康的でネガティブな感情(その人がゴールに向かう妨げにならない)
- 不健康でネガティブな感情(その人がゴールに向かう妨げになる)
たとえば、人が亡くなって悲しいという気持ちは「健康的でネガティブな感情」です。それを無理やりなくす必要も、ポジティブに変換する必要もありません。ところがそれがエスカレートして「抑うつ状態」になると問題です。こちらは「不健康でネガティブな感情」となります。
仕事や人間関係、政治の状況に「怒りを感じる」…これだけならネガティブですが健康的な感情だといえます。ところが怒りがエスカレートして、家族に当たり散らしたり暴力を振るうようになると、これは「不健康な怒り」だと言えるでしょう。
逆にいえば、生活に支障をきたすほどの「不健康でネガティブな感情」が沸き起こった場合は、「健康でネガティブな感情」へと和らげることが現実的な目標設定になります。
もし、他人や家族に当たり散らしてしまうような「不健康な怒り」が沸き起こってきたら、それを「ほどほどの健康的な怒り」や「ちょっとしたイライラ」に和らげてあげることを試みてみましょう。
(例)
- 「不安で何も手につかない」→「気がかりだけど、できることから取り組んでいこう」
- 「怒りで周りに当たり散らしてしまう」→「ムカつくときは、ひととおり愚痴を言って次に移ろう」
- 「落ち込んで何も手につかない」→「悲しみは悲しみとして静かに受け止めよう」
「何でもポジティブ変換」ではなく「健康的なネガティブ感情」を目指してみましょう。
○傾聴で聞き分けるーー相手の世界と自分の世界
最後は「傾聴」です。テクニック的なことはさておき、大切なのは「相手の世界と自分の世界を分ける」ことです。
相手がいま何を考えどんな世界を見ているのか、それを「よい/わるい」のジャッジを下すことなく、そのまま理解し言葉にして伝え返すことです。
新型コロナや仕事やお金や教育や人間関係や家事やその他の話題…。相手が自分と正反対な見方だったとしても、反論する前にまずは受け止めること。そして「あなたはそんな風に世界を見ているのですね」という視点で自分の理解を伝え返すこと。これが傾聴です。
もちろん、日常会話でいつもこの対話法を使う必要はありません。侃々諤々、意見を戦わせることもOKです。
ただ一方で、「相手の世界をそのまま受け止めて伝え返す」という傾聴の技術を選択肢として持っておくと、意見の違いがコミュニケーションや信頼関係の断絶に結びつくことを防ぐことができます。
要は、対話のオプション(選択肢)を持っておくと、家の中で関係をわるくさせずにすむということ。
○まとめ:2つの「分ける」と1つの「聞き分ける」
「コロナうつ」「コロナ離婚」の予防として、REBTとMIを用いる「家族のセルフヘルプ」の視点から次の3つの対策をご紹介しました。よろしければ参考になさってください。
- 問題の種類を2つに分けるーー実用的問題と心理的問題
- ネガティブな感情を2つに分けるーー健康的と不健康
- 傾聴で聞き分けるーー相手の世界と自分の世界
Stay Home, Stay Safe! 皆様の安全を心より願っています。