子供のやる気を引き出す3ステップ(傾聴・動機づけ面接・REBT)
私が子供のころ、大人といえば主として「いい/ダメ」「しなさい」「すべきだ」「したほうがいい」といった、評価・指示・命令・アドバイスをする存在でした。
ところが、自分が逆の立場になって子どもたちと接すると、「評価・指示・命令・アドバイス」だけではうまく行かないことがわかります。
「勉強しない」「ゲームばかりしている」「学校にいかない」というときに、子供のやる気を引き出すには3段階のプロセスがあるように思います。
その段階を間違えて、無理やり子供を変化させようとしてもうまくいきません。
○子供のやる気を引き出す3ステップ
ステップ1:まず信頼関係をつくる段階〜傾聴
信頼関係ができていないにもかかわらず計画を進めようとしても上手くいきません。
子供との関係構築について、皆さんはいろんなノウハウを持っていると思いますが、どうしても上手く行かないときには、急がば回れの精神で「子供の話をよく聞く=傾聴」をオススメします。
傾聴は、ただ漠然と耳を傾けるだけではありません。3つの大切な要素があります。
傾聴の1:相手の存在を無条件に受け入れる
まずは子供をジャッジするあらゆる条件を取り払います。勉強ができなくても、ゲームばかりしていても、学校に行かなくても、反抗的でも、すべての条件を取り払って、子供の存在を無条件に認めるところから始めます。
傾聴の2:相手の世界に興味を持つ
大人は子供の考えや行動について反射的に「いい/わるい」の評価をくだしがちですが、その前にまず「興味をもって相手を理解すること」ことが大切です。その子がどんな風に世の中や周りの人を見ているのか、何を感じているのか、それを理解して、可能なら本人に伝え返して確かめます。
傾聴の3:嘘をつかない
口先だけで興味を示したり感心したりしても子供にはバレます。あなた自身が感じたことを嘘をつかず、正確に言語化して伝えることも、傾聴の大切な要素です。
ステップ2:信頼関係はあるが、やる気がない段階〜やる気を引き出す
ステップ2は、子供との信頼関係はあるけれど、子供のやる気がまだない段階です。
この段階では、子供の言葉によく耳を傾けながら、やる気を引き出していきます。
やる気を引き出すのに魔法の薬はありませんが、たとえば次のような方法はいい選択肢になります。
やる気を引き出す1:上手に質問する
質問を上手く使うことによって、相手のやる気を引き出すことできます。ただし、質問攻めの印象にならないように注意しましょう。
・できない側ではなく、できる側/やる気がでる側を質問する
「なぜ勉強しないの?」ではなく、「今日は少し勉強できたね。どうだった?」というように、「できない側」ではなく「できた側/やる気がでる側」について質問します。また、子供が熱中していることの創造的な面に興味をもって聞くのもいいでしょう。そこにいろんなヒントが隠れています。
・「閉じた質問」より「開かれた質問」を使う
「やるの?やらないの?どっちなの?」というように限られた選択肢しかない「閉じた質問」(クローズド・クエスチョン)よりも、相手が自由に答えられる「開かれた質問」(オープンクエスチョン)をできるだけ使います。「そのときどう感じた?」「それはどんな風に面白かった?」など。
やる気を引き出す2:是認する
子供のやる気を高める方法として、「いいところ」「できたところ」を見つけてそれに言及する「是認」があります。
ただしあまり強く大げさに褒めすぎると逆にプレッシャーになることも。
あなたが感じた、子供のいいところや強みを素直に言葉にしてあげるのがいいでしょう。
やる気を引き出す3:聞き返して、深める
傾聴の応用としては、やる気がでる側の言葉を聞き返して深める方法があります。
(例)「前回はあまりできなかったけど、前に勉強したときはいい点がとれた」という子供に対して、「なるほど。前はうまくいったことがあったんだね」とか、それに続けて「そのときは、どんな工夫をしたの?」「どんな風に感じた」など、「やる気がでる方向」の言葉を聞き返したり質問したりしながら深めていきます。
それに対して「前回あんまりできなかったんだね」「何でやらなかったの?」と、「やる気がでない方向」の言葉を追求していくと、またやる気がなくなってしまうので、こちらはあまりオススメできません。
やる気を引き出す4:一方的にならないように情報提供する
情報提供や提案・アドバイスを行う場合、一方的に行うのではなく、相手の許可を得てから行うことが望ましいです。
たとえば、「…について、役に立つ情報があるんだけど、ちょっと言ってもいい?」というぐあいです。
そして、情報提供した後には「開かれた質問」で相手の感想を聞きます。
(例)「…ということ(情報・提案)なんだけど、どう思う?」
このように、情報提供やアドバイスは一方通行にならないように、相手の意志を尊重しながら行ってみましょう。
○ステップ3:やる気がでてきた段階〜計画・実行する
ステップ3は、いよいよ計画段階です。
1.計画する
ここで大事なのは、「計画」がステップ3に含まれていることです。信頼関係をつくる(ステップ1)、やる気を引き出す(ステップ2)をすっ飛ばして、いきなり計画段階に進もうとしても上手くいきません。
2.できたところを認める、できなかったことは気にしない
計画の実行段階でも、できたところにフォーカスを当てることで、やる気を高めることができます。たとえできないことがあっても気にしないこともコツのひとつです。
3.改善点のディスカッション
信頼関係とやる気が十分あれば(=ステップ1、2が達成できていれば)、改善点のディスカッションも有効です。
○まとめ
いかがでしょうか? 勉強にしろ、生活習慣や登校にしろ、本人が受け入れ体勢になっていないのに、一方的に計画実行を進めようとしても上手くいきません。
そんなときはこの記事の3ステップを意識してみてください。
ステップ1:信頼関係を作る〜傾聴
- 相手の存在を無条件に受け入れる
- 相手の世界に興味を持つ
- 嘘をつかない
ステップ2:信頼関係はあるがやる気がない段階〜やる気を引き出す
- 上手に質問する
- 是認する
- やる気がでる方向の言葉を聞き返して、深める
- 一方的にならないように情報提供する
ステップ3:やる気がでてきた段階〜計画・実行する
- 計画する
- できたところを認める、できなかったことは気にしない
- 改善点のディスカッション
大切なのは、いまステップ1〜3のどの段階かを知ることです。
もちろん、子供とのコミュニケーションはいろいろあるので、最初からこの方法にこだわる必要はありません。
もし自己流の方法がうまく行かないときは、ステップ1〜3を意識してみるといいですよ。