REBTによるモンダイ解決の手順〜コップくんの場合

一般的にモンダイ解決は次の順序で進めます。

  1. モンダイは何か?
  2. 原因は何か?
  3. 解決策は何か?

論理療法によるモンダイ解決も基本的にはこの手順に従います。

感情や行動の問題を扱う論理療法を「コップくん」というキャラで説明してみましょう。

4コマ漫画「コップくん」

 

REBTによるモンダイ解決の手順〜コップくんの場合

一般的な問題解決の手順は以下のとおりです。

  1. モンダイは何か?
  2. 原因は何か?
  3. 解決策は何か?

大枠ではそれに従いつつ、論理療法は個人の感情や行動の問題に特化して、次のような順序で進めます。

(1)モンダイは何か?…問題となる「出来事・場面」や「感情・行動」を特定する

(2)原因は何か?…原因となる「ビリーフ(考え、思い込み)」をさがす

(3)解決策は何か?…(2)のビリーフの矛盾をみつけ、より適正なビリーフを定着させる

これを「コップくん」というキャラで説明してみましょう。

(1)問題は何か?

コップくんは、社会の不公平が許せません。

社会が自分を正当に扱ってくれないことに、怒りが沸き起こり、家族に八つ当たりしていまいます。

この場合の問題となる「出来事・場面」や「感情・行動」は以下のようになります。

・出来事・場面:ニュースを見る

・感情の問題:怒りが制御できない

・行動の問題:家族に八つ当たりしてしまう

コップくん

(2)原因は何か?

さて、コップくんの「怒り/家族への八つ当たり」の原因は何でしょうか?

社会が不公平なことでしょうか?

論理療法では、怒りの原因はコップくん自身にあると考えます。

同じ社会に暮らしていても、コップくんのように怒りでいっぱいになる人ばかりではありませんからね。

怒りの原因はコップくん自身に

「社会が公平であるといいな」…これは健全な願望です。

ところがそれがエスカレートして「社会は絶対に公平でなければならない(そうでなければ耐えられない)」となると、感情や行動に支障をきたします

これはコップくんの心の水位が満杯になってしまった状態です。ここにはもう妥協の余地がなくなっています。これがイラショナルビリーフ(不合理な信念)を抱えた状態です。

コップくん。ビリーフの水位がいっぱいに。

感情や行動が混乱する原因は、その人自身の「思い込み(ビリーフ)」にある。

これが論理療法の中心となる仮説です。

(3)解決策は何か?

ここで、問題と原因が特定できました。

(1)問題:「テレビのニュースを見て、怒りが湧きたち、家族に八つ当たりしてしまう」

(2)原因:「社会は絶対に公平でなければならない!(そうでなければ耐えられない)」というビリーフ

こんどは、この原因となるビリーフの矛盾を明らかにします。

矛盾を明らかにする基本パターンは3種類あります。

1:そのビリーフは筋が通っているか?(論理的チェック)

「社会が公平であるといいな」…これは健全な願望です。

しかし「社会は絶対に公平でなければならない」…これは論理的でしょうか?

「そうあってほしいという願望は絶対に叶えられなければならない」という考えは論理的でしょうか。

そこには論理の飛躍があります。

「願望が100%叶えられなければならないという論理的な必然性はない」…そのことに気づけば、コップくんはビリーフの水位を少し下げることができます。

ビリーフの水位を下げる

2:そのビリーフは現実に即しているか?(経験的チェック)

「社会は絶対に公平でなければならない」…この強い思いは現実に則しているでしょうか?

現実には、当然ながら公平でないこともありますね。

この現実的な見方を受け入れることができれば、コップくんのビリーフの水位がもう少し下げることができます。

3:そのビリーフは役に立つか?(実用的チェック)

「社会は絶対に公平でなければならない」…このビリーフを持ち続けることは、彼が日常生活を送る上で実用的・効果的でしょうか。

怒りでいっぱいになって、家族にも迷惑を掛けているわけですから、メリットよりデメリットの方が大きい可能性が高そうです。

なので、「このビリーフを持ち続けることは、自分にとっても家族にとっても助けにならない」という考えを受け入れられれば、コップくんのビリーフの水位ももう少し下がりそうですね。

○新しい、より現実に則したビリーフを作る。

コップくんは、「社会は絶対に公平でなければならない!」という極端なビリーフの代わりに、新しい、より現実的なビリーフを作ることができます。

たとえば、それはこんなビリーフです。

(新しいビリーフの例)

「社会は公平であってほしいと僕は願っている。とはいえ、社会が常に100%公平でなければいけないと考えることにはどうやら無理があってデメリットの方が多そうだ。社会が公平でなくても、それを現実として受け入れたうえで、自分に何ができるか考えてみよう」

水位が下がってきたコップくん

コップくんの水位は、結構下がってきたように思えませんか。

この時点で、古いビリーフと新しいビリーフのどちらがいいか、コップくんに選んでもらうのもいいかもしれませんね。

○新しいビリーフを定着させる

新しいビリーフを作ることはできても、それが簡単に定着するわけではありません。

次にニュースを見たときに、また「社会は絶対に公平でなければならない!」というビリーフがムクムクと湧いてきて、怒りが爆発してしまうことも十分考えられます。

そのための努力は必要ですが、ともかく、満杯で溢れそうだったビリーフの水位を下げることで、コップくんは前よりも感情をコントロールして、目標に向かって行動しやすくなったと言えるでしょう。

動きやすくなったコップくん

このように、論理療法は、構造化された問題解決の手順だといえます。

ビリーフの水位を下げるという解決法、皆さんもぜひ参考になさってください。

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