自分を知る〜動機づけ面接の「価値カード」をM1ぐらんぷり方式で!

価値カードを見ているイラスト

この3連休は横浜で動機づけ面接(MI)のフォーラムがありました。

3日間集中講座には受講者、ファシリテーター合わせて全国から100名ほど集まる賑わい。私は海外論文を読むコツや、ファシリテーションのあり方、アルコール依存への取り組み方などの研修に参加しました。

自分を知る〜動機づけ面接の「価値カード」をM1ぐらんぷり方式で!

○価値観を掘り下げること

ところで私は普段、日本で数少ない依存症専門クリニックである横浜の大石クリニックの研修に参加して、日本の代表的トレーナーのひとりである加濃正人先生に動機づけ面接を教わっています。

継続して参加するうちに学んだことをひとつ挙げるとすれば、それは「価値観を掘り下げる」ことです。

動機づけ面接ではクライエントの話を傾聴しますが、これはただ漠然と聴くのではありません。

クライエントの「価値観」を掘り下げることが重要になります。

たとえばある人の価値観を掘り下げると、「家族が大切」だったとします。

すると、これから長く家族を大切にしていくためには、自分が健康でいることもその人にとって重要かもしれません。

もしそうだとすれば、「家族が大切&自分が健康であること」と「暴飲暴食グセ」の矛盾に気づいて、食生活を改善するモチベーションの向上が期待できることになります。

これは「食べすぎ飲み過ぎは控えた方がいいよ」と周りから押し付けるよりも、効果的な方法になります。

前回のブログでは「表には見えないけれどその人が大切にしている価値観」を「モアイのハート」にたとえてみました。よければこちらも参考にしてみてください。

モアイのハート〜新年の目標設定と「重要度」の上げ方

モアイのイラスト。地下の部分あり。ハートに注目。

 

○100枚の価値カード

さて、自分がどんなことを大切にしているか、価値観を知る方法のひとつに「価値カード」があります。

さまざまな価値観が記されたカードから、自分が大切にしている価値を選んでいくのです。

ここでは『動機づけ面接 第3版(上)』にある、102のリストを転載してみます。

価値カードのページ

なお、この価値カードはパブリックドメイン(自由に使える著作物)であり、コピーや翻案、許可なしの使用は自由にできます。

102のリストのうち最後の2つは訳者である原井宏明先生が、日本人向け項目として付け加えているものです。また、この102枚にとらわれずに追加しても構いません。

(1〜10)

【受け入れられる】 ありのままの自分を受け入れてもらうこと

【正確さ】 自分の意見や信念が正確であること

【達成】 重要なことを成し遂げること

【冒険】 新しいエキサイティングな経験をすること

【芸術】 アートを鑑賞したり、自分自身を芸術で表現したりすること

【魅力】 外見的に人を引きつけること

【権威】 他人の上に立ち責任を持つこと

【自律】 独立して自己決定すること

【美】  身の回りの美しさを鑑賞すること

【所属】 所属の感覚を持つ、一部になること

 

(11〜20)

【世話】 他人の世話をすること

【チャレンジ】 困難に立ち向かうこと

【心地よさ】 快適で居心地のよい人生を送ること

【コミットメント】 息の長い有意義な誓いを立てること

【思いやり】 他人の悩みを感じいたわること

【複雑さ】 人生の込み入った事情を前向きに受け止めること

【妥協】 合意に達するためにギブアンドテイクを前向きに考えること

【貢献】 長く残るような貢献を世の中にすること

【協力】 他人と協力して働くこと

【勇気】 逆境に直面しても勇敢で強靭であること

 

(21〜30)

【礼儀】 他人に対して思いやり深く丁寧であること

【創造性】 新しい独創的なアイデアを持つこと

【好奇心】 新しいことを探し出し、経験し、学ぶこと

【頼りになること】 信用と信頼がおけること

【勤勉】 自分のすることにおいて徹底していて、良心的であること

【任務】 自分に与えられた役割と義務を果たすこと

【エコロジー】 環境と調和して生きること

【興奮】 スリルと刺激に満ちた人生を送ること

【貞節】 配偶者・パートナーに対して誠実に真心をつくすこと

【名声】 他人に認められ有名になること

 

(31〜40)

【家族】 幸せな愛し合う家族を持つこと

【フィットネス】 丈夫で均整のとれた身体を持つこと

【柔軟性】 新しい環境に容易に適応すること

【寛大さ】 他人を許せること

【自由】 不当な制限や限定から解放されていること

【友情】 親しくてささえになる友人を持つこと

【面白さ】 面白おかしく楽しく遊ぶこと

【気前良さ】 他人に自分の持つものを与えること

【誠実さ】 自分に正直に振る舞うこと

【神仏の意志】 神・仏の意志を求めそれに従うこと

 

(41〜50)

【成長】 変化と成長を続けること

【健康】 身体的に好調で健やかであること

【役立つこと】 他人の助けになること

【正直さ】 嘘をつかず正直であること

【希望】 前向きで楽観的なものの見方を保つこと

【謙虚】 控えめでもったいぶらないこと

【ユーモア】 自分と世の中について微笑ましい部分を見つけること

【想像力】 夢を持ち、可能性を見つめること

【独立】 他人に頼らず自由であること

【勤勉】 自分の課題について懸命かつ、よく働くこと

 

(51〜60)

【心のやすらぎ】 個人的な平和を味わうこと

【一貫性】 自分の価値観と一致した生き方で毎日を過ごすこと

【知性】 鋭く活発な知力を維持する

【親密さ】 他人と心の奥底を分かち合うこと

【正義】 すべての人に対する公正で平等な扱いを与えること

【知識】 有意義な知識を学びまた他人に与えること

【リーダーシップ】 他人を鼓舞し、導くこと

【余暇】 心身を休めて気晴らしをすること

【愛される】 親しい人に愛されること

【愛すること】 他人に愛を与えること

 

(61〜70)

【熟練】 日常の活動・業務に熟達・精通すること

【マインドフルネス】 何物にもとらわれずに柔軟に今の瞬間を見つめ生きること

【中庸】 過度を控え適切さを求めること

【一夫一婦制】 一人だけの親密で愛し合う配偶者・パートナーを持つこと

【音楽】 音楽を楽しむか音楽で自分自身を表現すること

【決まり事に従わない】 権威や決まり事を疑い立ち向かうこと

【新奇性】 変化やバラエティーに富んだ人生を送ること

【慈しみ】 他人を労り慈しむこと

【心の広さ】 新しい経験や発想方法を受け入れること

【秩序】 秩序正しく、整理が行き届いた生活を送ること

 

(71〜80)

【情熱】 信念や活動、人に対して強い感情を持つこと

【愛国心】 自分の国を愛し、奉仕し、守ること

【快楽】 いい気持ちになること

【人気】 たくさんの人に好かれること

【権力】 他人を支配すること

【実用主義】 実際的、現実的、有意義なことに集中すること

【守る】 愛する人を保護し安全を保つこと

【養う】 家族を養い、世話をすること

【目的】 人生の意味と方向を持つこと

【合理性】 道理と論理に従うこと

 

(81〜90)

【現実主義】 現実的・実際的に物事を考え、振る舞うこと

【責任】 責任のある判断を行い実行すること

【リスク】 リスクを冒してチャンスを得ること

【ロマンス】 エキサイティングで燃え上がるような恋をすること

【安全】 強いものに守られて危険や不安を感じないこと

【自分を受け入れる】 あるがままの自分を受け入れること

【セルフコントロール】 自分の振る舞いについて自ら律すること

【自尊心】 自分自身について良いと感じること

【自分を知る】 自分自身について深い、正直な理解を持つこと

【奉仕】 他人に奉仕すること

 

(91〜102)

【性】 質・量ともに満足のいくセックスライフ

【単純さ】 無欲でシンプルな生活

【孤独】 他人から離れて一人だけの時間と場所を持つこと

【スピリチュアリティ】 霊的な成長や成熟、悟り、世俗の自分を超える何かに触れること

【安定性】 波のない落ち着いた人生を送ること

【寛大】 自分と異なった人を受け入れ尊重すること

【伝統】 過去の習わしを尊重し従うこと

【徳】 道理に従い有徳な生活をすること

【富】 金持ちになること

【世界平和】 世界の平和のために働くこと

【親孝行】 子として親を大切にしよく仕え、恩に報いること

【家】 先祖から代々続いてきた家すじ、家系、一門

※出典:『動機づけ面接 第3版(上)』(ウイリアム・R・ミラー、ステファン・ロルニック著、原井宏明監訳)

 

 

○価値カードをM1ぐらんぷりのように選んでいく

いかがでしょうか。実に多様な価値観がありますね。

ここから自分にしっくりくる価値観を選び出す方法はいろいろあると思いますが、たとえば、漫才のM1ぐらんぷりのように、「一次予選」→「二次予選」→「準決勝」→「決勝」と絞り込んでいくのはいかがでしょうか。

私は次のようにやってみました。

(M1ぐらんぷり形式で選ぶ)

・102のリストをワードにまるごとコピーする。

・「一次予選」として各ブロックごとに、自分に合う価値観を2〜3ずつ選んで、別のファイルにコピペする。(場合によって4つ、5つになってもOK。深く考えずに直感的に選びます。)

・「二次予選」としてさらに選んでコピペする。

(以下同様)

すると、次のようになりました。一次予選、二次予選がキリのいい数字になったのは偶然です。

  1. 一次予選25(達成、芸術、チャレンジ、心地よさ、貢献、創造性、好奇心、家族、フィットネス、自由、成長、健康、役立つこと、ユーモア、想像力、愛される、マインドフルネス、音楽、人気、合理性、現実主義、自分を受け入れる、セルフコントロール、自分を知る、性)
  2. 二次予選10(創造性、好奇心、家族、フィットネス、役立つこと、ユーモア、マインドフルネス、音楽、セルフコントロール、自分を知る)
  3. 準決勝6(好奇心、家族、フィットネス、ユーモア、音楽、セルフコントロール)

このあと、決勝でさらに絞り込もうとしましたが、「う〜ん…これ以上絞りたくない」という気分になったので、ひとまずここで終わりに。

私が大切にしている価値

  • 【好奇心】 新しいことを探し出し、経験し、学ぶこと
  • 【家族】 幸せな愛し合う家族を持つこと
  • 【フィットネス】 丈夫で均整のとれた身体を持つこと
  • 【ユーモア】 自分と世の中について微笑ましい部分を見つけること
  • 【音楽】 音楽を楽しむか音楽で自分自身を表現すること
  • 【セルフコントロール】 自分の振る舞いについて自ら律すること

こんなところでしょうか。

みなさんもぜひ、お時間あるときにやってみてください。

○価値観を知ることはコミュニケーションにも役立つ

自分の価値観を知ると、それを活かしながら行動へのモチベーションにつなげることができます。

また、自分の価値観だけではなく、他人の価値観を知ることも日常で役に立ちます。たとえば…

【愛国心】 自分の国を愛し、奉仕し、守ること

を大切にしている人がいるとします。その人と話す場合に、相手が大切にしている愛国心を否定しても反発されるだけです。反対意見を言う場合でも、相手をを尊重しながら話せば、結果も違ってくることでしょう。

一例を挙げれば…

(サンドイッチ式の話し方)

あなたは、○○を大切にしていらっしゃるんですね。(相手の価値観の確認)

私の意見は(あなたと違って)△△です。(自分の意見)

とはいえ、あなたの○○という意見も大切だと思います。(相手の価値観の再確認)

…と、相手を尊重しながらサンドイッチ形式で話すことで、うまく意見を伝えられるケースもあるでしょう。

自分や相手の価値観を知る「価値カード」をどうぞ役立ててみてください。

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