動機づけ面接と家族のセルフヘルプ〜「学校に行きたくない」子どもの場合
先週の「家族のセルフヘルプ」記事について、身近な問題として関心を持ってくださる人が何人もいました。
たしかに、ちょっと検索するだけでも「小中学生の不登校14万人」「中高生のネット依存93万人」「ひきこもり100万人」というような情報がヒットします。
家族の誰か(例えば親)が誰か(例えば子供)の状況を改善したいと思うがうまくいかない…そんな状況で継続的な「セルフヘルプ」に取り組むことのニーズはとても多いと感じました。
私の構想は「論理療法(=まず自分が楽になる)と動機づけ面接(=相手のやる気を引き出す)を組み合わせることで家族のセルフヘルプを実現する」ことですが、具体的にはどんな行動になるのでしょう?
動機づけ面接(=傾聴しながらガイドする)の活用例をひとつ挙げてみます。
動機づけ面接と家族のセルフヘルプ〜「学校に行きたくない」子どもの場合
中学生の子どもがこう言ったとします。
「勉強しなくちゃいけないのは分かるけど、今日は学校に行きたくない。」
この場合、あなたが親ならどう対応するでしょうか。ちょっと考えてみてください。
(1)とにかく学校に行くように説得する
(2)学校に行きたくない理由を丁寧に聞く
(3)その他の対応
いかがでしょうか。
(1)は子供の気持ちを無視しているから良くないとして、(2)「学校に行きたくない理由を丁寧に聞く」がいいと思った方も多いのではないでしょうか。
実は、(2)は動機づけとは逆の対応(=やる気を失わせる方向)になります。
人は誰でも自ら発する言葉によって動機づけられる性質があります。
「学校に行きたくない理由」を答えなければいけない状況になることで、子供はますます学校に行きたくなくなるという側面もあるのです。
○やる気を引き出す対応の例
ならばどうすればいいか? ここでは「学校に行きたくない」理由ではなく「学校に行きたい」側の理由に注目します。
この子供は「勉強しなくちゃいけないのは分かるけど…」と言っています。ここに注目します。
たとえば、「(学校に行きたくない一方で) 勉強しなくちゃいけないと少し思ってるんだ…」と伝え返してみます。
もし返事が「うん」だったら、「勉強すると例えばどんないいことがあるの?」と聞いてみるのもいいかもしれません。
そうやって勉強をすることの意味を聞いていくと、「勉強することで将来やりたいことが実現できる…」という話まで深めていける可能性もあります。
このように「学校に行きたくない」理由ではなく、「勉強をしたい、学校に行きたい気持ち」を引き出すのが、動機づけ面接の基本的な方法になります。
もちろん現実はここまで単純ではありませんし、この記事で省略していることはたくさんあります。
とはいえ、もしこのケースで「学校に行きたくない理由を聞く」しか思い浮かばないとしたら、別の選択肢(=現状維持ではなく、変わりたい方の理由を掘り下げていく)があることを知っていただければ幸いです。
○フィットネスと同じ意識でとりくむ「家族のセルフヘルプ」
家族の問題というと、どうしても「人に知られたくない」「自力で何とかしたい」という気持ちが強くなるものです。
とはいえ、長いあいだ状況が改善しなかったり、いい方針が見つからなかったりする場合は、自己流ではなく問題解決の「スタイル/型」を身につけるのもひとつの方法です。
動機づけ面接は一日や二日で身につく技術ではありませんが、それは英会話や楽器の演奏やフィットネス(肉体的・健康的に望ましい状態)への取り組みも同じです。
それらに取り組むのと同じ感覚で、「家族のセルフヘルプ」に取り組むのもいいと思いませんか。