ポジティブシンキングの罠〜山田ルイ53世さんのひきこもり講演で印象的だったこと
週末行ったお笑い芸人・山田ルイ53世さん(髭男爵)のひきこもり講演で印象的だったこと。
(メモ)
山田さんはここ数年、ひきこもり関係の取材を受けることも多い。
ところが取材者の多くが取材の最後に「その6年間があるから今の山田さんがあるんですよね?」「すべてが糧になったんですね」など、「いい話」としてまとめようとする。・・・が、それにはいつも違和感を覚える。
彼自身の感覚としては、家にひきこもっていた6年間はしんどかったし、本当に無駄だったという気がする。それを「いい話」にまとめようとするのは、どこかに「無駄をゆるせない空気感」のようなものがあるのではないか。(大意)
ここで興味深い点が2つある。
1つ目は「ポジティブシンキングの罠」。
ネガティブな出来事(この場合は6年間のひきこもり)を、ポジティブに捉える方法は、もちろんある。
(「リフレーミング」(枠組みを捉え直す))
が、本人がその気になっていないのに、無理やり「ネガ→ポジ変換」「リフレーミング」を押し付けても意味がない。
家族が亡くなって悲しんでいる人に「この経験が糧になりますね」とポジティブな見方を薦めたらムッとされるに違いない。
ネガティブな出来事を(ポジティブ変換せず)ネガティブなまま受け入れることは、意外と大切。
2つ目は、「相手を理解しようとすること」の大切さ。
せっかく取材しているのだから、「6年間のひきこもり生活」について山田さんがどう感じているのか知りたいなら、取材中に質問すればいい。
あるいは、「ひきこもりの間、しんどかったとのことですが、後から振り返ればその経験が糧になったと思えることはありますか?」というように、仮説を提示して本人に確認すればいい。
私たちはしばしば、理解を本人に確認する手間を省いて、都合のいいストーリーを作ってしまいがち。
藤本祥和(REBT心理士、動機づけ面接トレーナー、「ハートのフィットネスクラブ」主宰)