中学生でもわかるREBT(論理療法)入門〜「見えない壁」の克服法(2)ABCで考える
心の中の「見えない壁」に注目した前回に続き、今回はREBTの最大の特徴ともいえるABC理論を紹介します。
中学生でもわかるREBT(論理療法)入門〜「見えない壁」の克服法(2)ABCで考える
○前回のおさらい:出来事(A)が結果(C)を決めるのではない
たとえば「先生に叱られた」という不運なできごとがあったとします。
でもそれが直接「落ち込み」を招くわけではありません。
だって、同じように先生に叱られても、結果は人によって違いますよね。
ガックリ落ち込む人、逆ギレする人、叱られても平気な人…。もちろん「心機一転がんばろう!」と思う人もいます。
あなたが叱られて落ち込んだとしても、それは数ある反応のひとつにすぎないのです。
そのなかで「落ち込み」という不健康な結果がなぜ生じるのか。その原因は、あなたが心に抱えている「見えない壁=ガンコな思い込み」だというのが、REBTの洞察です。
○ABC理論
不健康な結果(C)の原因となる「見えない壁」はガンコで極端なことが特徴です。
たとえば…
- 先生は絶対にネガティブな評価をくだすべきではない!(絶対…べき!)
- 先生に叱られることは恐ろしすぎる。(…は恐ろしい)
- 先生に叱られるなんてマジ無理。(…は耐えられない)
- 先生に叱られたら自分はもうダメ人間だ。(…は価値がない)
このような「見えない壁=ガンコな思い込み」を抱えていると、「先生は絶対にネガティブな評価をくだすべきではない。なのにボクを叱った。もう耐えられない。自分はダメ人間だ」と、偏った思考パターンに入り込み、「落ち込み」という不健康な結果を招いてしまうことになります。
「ABC理論」についてまとめると、次のようになります。
「できごと(A) 」✕ 「思い込み・考え(B)」 = 「結果 (C)」
ちなみに、REBT(論理療法)はアメリカで誕生したので、このABCはそれぞれ英語に対応しています。
- A:できごと(Activating Event)
- B:思い込み/考え(Belief)
- C:結果(感情・行動)(Consequence)
中でも B(ビリーフ、信念)の中で、その人の感情や行動を混乱させるもととなるガンコな思い込みをイラショナルビリーフ(irrational belief, 不合理な思い込み)と呼びます。
だから、ガンコで融通の効かないB(イラショナルビリーフ/「見えない壁」)を、もっと柔軟なビリーフに変えてやることで、できごとへの対応力を身につけられるようになるというのが、REBTの考え方なのです。
○おまけ:ABC理論の広がり
このABC理論はREBT(論理療法)のいちばんの特徴ですが、現在はREBTの専売特許ではなく、認知行動療法全般にも広く取り入れられている、すぐれた理論です。
また遠く遡れば、古代ギリシャの哲学者エピクテトスはこんなことを言っています。
人々を不安にさせるのは、事柄ではなく、事柄についての思いである。(エピクテトス)
人間に対するこのような洞察は古くからの知恵であったことがわかります。
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○まとめ
- 不運なできごと(A)が直接、不健康な感情や行動という結果(C)を生むのではない。
- 心に抱えている「見えない壁=ガンコな思い込み、イラショナルビリーフ」(B)が不健康な結果(C)を生む
- だからこのB(ガンコな思い込み)をもっと柔軟な考えに変えることで、感情や行動を適正化することができる
このABCの洞察は日常生活でも非常に有効なので、ぜひ覚えておいてください。