カール・ロジャーズのおすすめ本は?〜傾聴とMIの関係を深める


先週の記事「カール・ロジャーズも喜ぶ!?『実用的な傾聴としての動機づけ面接(MI)」のあと、ちょっとした雑談として JaSMINe(寛容と連携の日本動機づけ面接学会)のメーリングリストに投稿してみました。

このメーリングリストには、医師、看護師、栄養士、司法や教育関連など専門職の方々が大勢いらっします。思い切って投げかけてみることで面白いご返事がいろいろともらえました。

内容は、MI(動機づけ面接)と傾聴との関係についてなど。自分の投稿を一部引用すると、こんな感じです。(ミラー&ロルニック先生はMIの創始者)

最近、ミラー&ロルニック先生たちのビデオ講座を受講中で、改めてMIの素晴らしさに感激しています。

そこで印象的なことのひとつが、MIの基礎としてカール・ロジャーズに由来するパーソン・センタード・アプローチの面が強調されていることでした。

(中略)

そんなことがあって、ロジャーズに由来する傾聴とMIの関係について興味があります。

というのも、もしいま日本で傾聴に興味がある人の10人に1人がMIを学んでくれたら、日本の傾聴もずいぶん底上げされるのではないかと思うからです。

その観点から、この週末にブログ記事を書いてみました。

(中略)

ひとつの見方としてMIを「実用的な傾聴」と捉えて紹介することで、MIへの入り口がひとつ増えるのではという気がしています。

皆さんは、傾聴とMIの関係について、どんな風に感じてらっしゃいますか。

私自身は医療や支援など現場の経験があるわけではないので、専門の方々の(or どなたでも)率直な感想が伺えると嬉しいです。

※太字強調は引用者

ロジャーズとMIのイラスト

○ロジャーズとMIの繋がりを見つめ直すこと

この投稿に対して、ある大学の先生(精神科医)は、最近、MIのルーツとしてのカール・ロジャーズに改めて注目している(大意)と返信をくださいました。

カウンセリングセッションを録音して聞き直すことはもちろん、常に仮説を立てて検証する科学的・実証的なアプローチを取り続けたロジャーズ。その流れの先に現代のMIがあり、またMIにとっても、その基本を学ぶことには意味がある…。

ロジャーズとMIの繋がりを改めて見つめ直すことには、大きな可能性がありそうです。

傾聴とMIの関係図

○MIを万能のテクニックだと過信しないこと

直接、返信メールをくださった方々もいらっしゃいました。

ロジャーズのいう、カウンセラーの条件としての「自己一致、純粋さ」の大切さを、忘れないようにしたいと仰ってくださった方

また、MIにはさまざまな技法がありますが、だからといって「MIは万能薬」というように過信してしまうと、心理や精神科にかかわる人たちから敬遠されてしまう…そんな懸念を伝えてくださった方も。

ある医療関係の方は、「MIがスキル重視で操作的に見える?」という部分に多少違和感を感じていたところ、実はそうではなく、クライアントへの純粋な関心をもって、セラピストの中に湧き上がってくるものもうまく使っていくことが大事なのだとわかった、その感激を伝えてくれました。

○ロジャーズのおすすめ本は?

上記、医療関係の方とのメールのやりとりで、こんな質問がありました。

「ロジャーズの精神や大事なところを学ぶのに、オススメ本ってありますか?」

私がオススメしたいのは、「短くてもいいから、ロジャーズ自身が書いた文章を読んでみること」です。

たとえば、『ロジャーズ選集(上)』という本があります。副題は「カウンセラーなら一度は読んでおきたい厳選33論文」となっていて、この看板にいつわりなし!

たとえば、「セラピーによるパーソナリティ変化の必要にして十分な条件」という論文では、有名な3条件「一致」「受容」「共感」についての、ロジャーズ自身の説明を読むことができます。

あるいは、ロジャーズの自伝的記述「私を語る」を読めば、教科書にある記述だけにおさまらない、ロジャーズの肉声が浮かび上がってくることでしょう。(ロジャーズ主要著作集『ロジャーズが語る 自己実現の道』でも「『これが私です』――私の専門家としての思考と人生哲学の発展」という題名で載っています)

どちらも20ページほどなので、図書館で借りて、休日の時間のあるときにでも読んでみれば、実りある読書体験になるにちがいありません。

○「MIから見た傾聴」と「傾聴から見たMI」

MIの視点から傾聴(ロジャーズ/来談者中心療法)を見ると、能の教えでいうところの「初心忘るべからず」にも通じるような、土台の部分だとも言えるでしょう。

傾聴がMIの土台になっているイラスト

MIはクライアントが変化へと向かう方向性を意識したコミュニケーションすきるですが、この土台部分がまさに、カール・ロジャーズから引き継がれた傾聴になっています。つまり、ここを大切にせずに変化を引き出そうとしても成立しません。

傾聴から見たMIの図

逆に、傾聴からMIを見たときには、この図のようになるかもしれません。

傾聴をより実践的に活用するとき、ロジャーズが半世紀前に直接書き残したことだけでなく、その後の研究成果も取り入れてみる。すると、必然的にMIに近づいていく…

「人は自分自身の力で変化することができる」…それがロジャーズの中心にある発想です。

「変わりたい」「もっとよくなりたい」「禁煙したい」「エクササイズが続けられたらなあ」「家族のためにも頑張らなきゃ」…など、「変化へと向かう言葉」をより深く傾聴する。

そこに意識が向けば、それはすでにMIの第一歩になるのです。

藤本祥和(REBT心理士、動機づけ面接トレーナー)

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