REBTの強みとは?(CBTとの違い)
先月7月18日は認知行動療法(CBT)で有名なアーロン・ベック博士の100歳の誕生日でしたが、その前日、REBTについて興味深いことがあったので、メモしておきます。
「REBTドクター」としてREBTの情報発信を行っているマトウェイチャク先生と、その友人でREBTの世界的リーダーであるドライデン先生のオンラインライブ。
「質問があればどうぞ」とのことだったので、zoomのチャットでこんな質問をしてみました。
「ベック博士のCBTと比べてREBTの強みはどんなところにあるとお考えですか?」と。
この議論は盛り上がって、いくつかの回答がもらえました。
CBTと比較したときのREBTの強み(とREBTセラピストが考える点)を紹介しましょう。
※広い意味ではREBTもCBT(認知行動療法)のひとつになります。ここでは、ベック博士の認知療法(CT)から発展した狭義のCBTと比較しています。
(1)シンプルなアイデアで様々な心理的問題に対応できること
REBTはABCDEというシンプルで理解しやすいかたちで、「不安」「怒り」「抑うつ」「罪悪感」「嫉妬」…といったさまざまな心理的問題に対応できます。そこが一番目の強みだと。(ドライデン先生)
感情の問題ごとに別々のアプローチを覚える必要がないから使い勝手がいいですね。
※REBTのセルフヘルプシートをもとに手書きしてみました
(2)「健康でネガティブな感情」について明確に論じていること
REBTでは「ネガティブな感情」を「健康」と「不健康」に分類します。
たとえば、同じ「怒り」でも、思わず相手を殴ったり暴言を吐いたりするような怒りは「不健康な怒り」です。
一方、「健康な怒り」もあります。たとえば世の中を良くするといった建設的な行動に変換できるような怒りです。
「怒り」がすべてダメなわけではないということ。もし「不健康な怒り」が自分のコントロールを失わせているなら、それを「健康的な怒り」に変えてあげればいいのです。
このように、ただ感情の度合いを低くするのではなく、自分の助けにならない「不健康でネガティブな感情」の代わりに「健康でネガティブな感情」を目標にする。それもREBTの特徴です。(ドライデン先生)
(3)日常生活をガイドしてくれる哲学でもあること
単なる感情的問題のコントロール法にとどまらず、REBTは私達の日常生活をガイドしてくれる哲学でもある、というのが「REBTドクター」マトウェイチャク先生の意見です。
REBTの創始者であるアルバート・エリス博士は感情的問題の解決に古今東西の哲学を活用することを強く意識していました。
その結果、REBTには古代ローマ・ストア派のエピクテトスなど多くの哲学者の考えが取り入れられています。私達が生きるこの世界の見方、アプローチの仕方を教えてくれるものだともいえます。
ここは、心理療法としてはユニークな側面ですね。
(4)「最悪のシナリオ」を効果的に用いること
これは、ニューヨークのアルバート・エリス研究所主催の講義で聞いた話ですが、エリス研究のある先生は、もともとはREBT以外の認知行動療法を専門にしていました。
ところが、15年ほど前に夫が悪性の脳腫瘍に冒されます。不安に苛まれる絶望的な状況です。そのときに、起こりうる最悪の自体を想定してそこに対処するREBTの方法(worst scenario)がとても救いになり、それ以来、REBTを専門にするようになったのだそうです。
この「最悪のシナリオ」については下の関連記事も参照してみてください。
(関連記事)REBT(論理療法)とCBT(認知行動療法)は何がちがう?
(5)REBTの良さは「柔軟性」にあり!
私自身は、REBTの魅力として「柔軟性」(flexibility)に注目したいと思います。
私たちが感情や行動の問題を抱えているとき、そこにはたいてい「硬直した態度」があります。
たとえば、「事業に絶対に成功しなければならない。失敗したら自分は生きる価値がないダメ人間だ」と頑なに信じている人は、失敗に耐えられないことでしょう。あるいは、失敗を恐れるあまり事業を始めることもできないかもしれません。
そんな硬直した考えの代わりに「事業に成功したい。だけど100%成功するとはかぎらない。失敗は嫌だけど、そのときはそのときだ。なんとかなる」という柔軟な態度を持つことができれば、その人は目標に向かって一歩踏み出すこともできるし、また運悪く失敗したとしても、何とか立ち直ってやっていけることでしょう。
このように、REBTでは「柔軟性」が鍵になります。
そして、この「柔軟性」を繰り返し練習して身につけることで、私達は山あり谷ありの人生を自分らしく生きやすくなります。
「硬直した態度」から「柔軟な態度」へ
この「硬直した態度」(rigid attitude)と「柔軟な態度」(flexible attitude)は、従来の用語では「不合理な信念」(irrational belief)と「合理的な信念」(rational belief)と呼ばれていました。
これはどちらを用いてもかまいませんが、私自身は「硬直した態度」から「柔軟な態度」への変換がしっくりきます。
REBTは、いわば「ココロの柔軟体操」でもあるのです。
セルフケアの習慣化を目指すオンラインコミュニティ「ハートのフィットネスクラブ」でも、この「ココロの柔軟体操」的なアプローチを取り入れています。
まとめ
以上、REBTの特徴・強みをいくつか紹介しました。
- シンプルなアイデアでさまざまな心理的問題に対応できること
- 「健康でネガティブな感情」について明確に論じていること
- 「最悪のシナリオ」を効果的に用いること
- 日常生活をガイドしてくれる哲学でもあること
- REBTの良さは「柔軟性」にあり!
私自身は上記の中でとくに(1)シンプルなアイデアと(5)柔軟性に魅力を感じています。また、(3)最悪のシナリオを想定することは、日常のさまざまな場面で効果を発揮します。
言い方を変えれば、感情や行動の問題があるときに、ほんの数分もあれば主要な原因(イラショナルビリーフ/硬直した態度)を特定できるというスピード感がREBTの魅力ともいえるでしょう。
REBTの入門については、REBT入門 15歳の君にも分かる〜失敗への取り組み方(1)〜(9)もぜひご参照ください。
藤本祥和(REBT心理士/動機づけ面接トレーナー/ハートのフィットネスクラブ主宰)
◯J-REBT東京支部フェイスブックページ開設しました。
私はJ-REBT(人生哲学感情心理学会/旧・論理療法学会)東京支部の共同世話人を務めています。
このたび、東京支部のフェイスブックグループを開設しました。
このフェイスブックグループは公開グループで誰でも見ることができます。
また、REBTに興味があってグループルールを守れる人なら誰でも参加することができます。
REBTについての質問やディスカッションなどもできますので、ご興味ある方はお気軽にご参加ください。
◯REBT入門コース
J-REBT主催の入門コースが8月29日(日)にオンラインで開催されます。
REBTの理論を1日かけてたっぷり学んでみたい方はぜひどうぞ。