「あの人と結婚できないと幸せになれない?」…ロジカル思考で楽になる
本に載っていたやや古めかしい例ですが、こんな女性がいるとします。
「あの人と結婚すれば、わたしは幸せになれる。でも、あの人とは永久に結婚なんてできない。だから、わたしは一生不幸なまま」
ロジカルな観点から、この思考のどこがおかしいかわかりますか?
(彼女の思考プロセス)
前提1:あの人と結婚すれば、わたしは幸せになれる。
前提2:でも、あの人とは永久に結婚なんてできない。
結論:だから、私は一生不幸なままだ。
前提1と前提2はとりあえず正しいとしておきましょう。そのとき、この結論が導けるかどうかですが…
P:あの人と結婚する。
Q:わたしは幸せになれる。
として
「PならばQ」のときに、「PでないならばQでない」とは必ずしもいえません。(論理学的には「裏」といいます)
「あの人と結婚できれば、私は幸せになれる」が真だとしても、「あの人と結婚できない場合」に自分が幸せになれるかどうかは、どこにも触れられていないからです。
たとえAさんと結婚できなくても、Bさん、あるいはCさんと結婚して幸せになる可能性があります。また、もちろん誰とも結婚しなくて幸せになれる可能性もあります。
「あの人と結婚できれば、わたしは幸せになれる」という推論は、集合や論理を表すオイラー図(ベン図)を使って、このように表わせます。
この図において、「あの人と結婚する」の外側の緑の部分は「あの人とは結婚しないけれど、わたしは幸せになれる」という可能性を表しています。
※ちなみに、「あの人と結婚できれば、わたしは幸せになれる」という前提が真の場合に論理的に導かれるのは、「私が幸せになっていないならば、あの人とは結婚していない」です(「対偶」(たいぐう))。これは図の黄色い部分ですね。たしかに、幸せでない場合は、あの人とは結婚していません。
○「代わりになる思考」の見つけ方
同じことは、日常生活のいろんな場面で目にすることができます。
たとえば、クラスで孤立して学校生活に悩んでいる生徒がいるとしましょう。
「クラスに友達ができれば、僕は元気に生きていける」
これが正しいとして、「クラスに友達ができなければ、僕は元気に生きていけない」のでしょうか。
そんなことはありません。たとえクラスに友達ができなくても、その子は他にいろんな選択肢があります。
クラスだけがその子の世界ではない。別に学校に行かなくたって元気に生きていく方法はあるのです。
◆
もうひとつ、「この事業が成功したら、私は胸を張って暮らせる」はどうでしょう。
これは、「この事業が失敗したら、私は胸を張って暮らせない」ことを意味しません。
事業が失敗しても、この人には胸を張って生きることができます。
成功/失敗にかかわらず、胸を張って生きるかどうかは自分で決めればいいのです。
「結婚」「友達」「事業」などなど、上手くいけばもちろんいいですが、たとえ上手く行かなくても、自分の生き方をネガティブな面だけに限定する必要はありません。
「結婚できれば幸せ」「友達ができれば元気」「事業が成功すれば胸を張れる」…それぞれの思考の外側にたくさんの「代わりになる思考」を持っておくことで、毎日が楽になり、いざというとき、次の一歩を踏み出しやすくなります。
藤本祥和(REBT心理士・動機づけ面接トレーナー)
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