動機づけ面接における「是認」とは?〜prize(大切にする)とpraise(ほめる)の違い

動機づけ面接の「是認」とは?

「傾聴しながらガイドする」コミュニケーションである動機づけ面接(MI)の基本技法に「是認」(affirmation)があります。

是認とは「相手の強みと努力を探し出して認めること」。単に個人的に相手に感心したということではなく、意図的なコミュニケーションの仕方です。

日本語で「是認」というと何やら難しくも見えますが、「認めて肯定する」という表現でもいいでしょう。

(是認の例)

  • 「今週は本当によく頑張りましたね!」“You really tried hard this week!”
  • 「あなたは良い親でありたいと思っておられるのですね、ご両親がそうであったように」“It’s important to you to be a good parent, just like your folks were for you.”
  • 「あなたは本当に責任感があって、正しい行いをしたいと望んでいらっしゃるんですね」“You are the kind of person who takes her responsibilities seriously, wanting to do the right thing.”
  • 「今日、来てくださってありがとうございます。しかも時間より早めに!」“Thanks for coming in today, and even arriving early!”
  • 「へー、なるほど! この1週間のご自身の記録を見事にとってきましたね」“Look at this! You did a really good job of keeping records this week.”

※例文の出典は “Motivational Interviewing 3rd edition” および MITI4.2.1

「是認」のイラスト

どうでしょう。イメージがつかめますか。

ところが一方で、「是認は賞賛(ほめること)とは違う」と、動機づけ面接では言われます。

この違いは何でしょうか?

今回の記事では、英語の動詞 prizeとpraiseの違いから説明を試みてみます。

英語が出てくるので少々大変かもしれませんが、「是認」と「賞賛(ほめること)」を使い分けることができれば、あなたのコミュニケーションスキルがひとつ増えることになります。

 prizeとpraiseの違い

私は10月に動機づけ面接のトレーナー研修を受けることもあり(米国の予定がオンラインになった)、英語でテキストや研修方法を学ぶ勉強会に参加しています。

そこでテキストを読んでいて、「あれ?」と思いました。

英単語 prizeとpraiseがでてくるイラスト

それはこんな文でした。

Affirming should be genuine; it should prize what actually is true about the person. (MI3, p64)

※太字は引用者

Affirming should be genuine. は「是認は率直でなければならない」ということです。「ゼニンはジェヌイン」とダジャレで覚えてもいいかもしれません。ロジャーズの来談者中心療法でいう「一致」ともつながります。口先だけではダメだということですね。

気になったのはつぎの文です。

it should prize what actually is true about the person.

※太字は引用者

あれ…「相手に関して実際に事実であることを褒めるべき」ってどういうこと?…と私は思いました。

動機づけ面接では「是認」と「賞賛」は違うと言われているはずなのに…。気になって調べると、なんとテキストには prizeとpraiseという似て非なる単語が使われていて、私はその区別がついていなかったのです。

テキストには「是認」(affirmation)の説明として prizeが登場し、一方で「是認」とは異なるものとして praiseが登場しています。prize(プライズ)とpraise(プレイズ)。ややこしいですね (^^;)

日本留学経験がある米国の友人に聞いたところ、こんな返事をくれました。

prizeは日本語の「大切にする」に近い。

(例)This is my prized possession. これは僕が大切にしているものだ。

praiseは「ほめる」に近い。

(例)My teacher praised my work ethic. 先生は私の真面目な仕事観を褒めてくれた。

prizeは名詞だと「賞」ですが、動詞で使われると「大切にする、重んじる、尊ぶ」という意味なのですね。一方の praiseは「ほめる」。

この違いを意識すると、動機づけ面接のテキストでは2つの単語が使い分けられていることがわかります。Prize(大切にする)は是認の説明に。Praise(ほめる)は是認とは異なるものとして。ややこしい…(笑)

動機づけ面接テキストにおける prizeとpraiseの使い分け

では、動機づけ面接のテキスト(Motivational Interviewing 3rd edition)における prizeとpraiseの使い分けを見てみましょう。目的は、是認(affirmation)と「ほめること」の違いを理解することです。

まずは prize(大切にする)から。

(prize 大切にする)

Affirming should be genuine; it should prize what actually is true about the person. (P64)

是認は率直でなければならない。相手に関して実際に事実であることを尊重すべきなのである。(p97)

 

Affirmation may not even so specific, but can reflect a broader (and genuine) prizing of the person:

“Welcome back! It’s good to see you.”

“You’re amazing!”(p66)

是認は具体的なものでなくてもかまわない。もっと広い範囲で(そして率直に)その人を大切に思っているという反応をすることでもいい。

「ようこそ戻ってきたね! また会えてよかった」

「ホントにびっくりだわ」(p99)

 

A second way to respond to change talk is with affirmation. You recognize and prize what the person is saying about change. (P184)
チェンジトークに反応する良いやり方の2つ目は是認である。その人が変化について話していると認識し、それを大切にするのである。(p273)

※太字は引用者。prizeについては私が「尊重する」「大切にする/思っている」と訳してみました。

 

続いて praise(ほめる)を見てみましょう。

(praise ほめる)

Affirmation is not the same as praise. To praise is to raise a roadblock, as it implies at least subtly that the praiser is in a one-up position as the arbiter of praise and blame. (p65)
是認は賞賛と同じではない。褒めることは(聞くことに対して)「障害物を作る」ことになってしまう。褒めている側は権威者として賞賛や非難を与える一段上の立場にあることを、ごく僅かではあってもほのめかしているからだ。(p98)

 

(索引として)

Praise, versus affirmation

「賞賛」vs「是認」

いかがでしょうか。prize(大切にする)は是認の説明に使われ、praise(ほめる)は是認と対比して扱われています。

では、最後に「是認」と「賞賛/ほめる」の違いをもう少し掘り下げつつまとめてみましょう。

「是認」と「ほめる」〜対等か対等でないか

動詞 prize(大切にする)とpraise(褒める)の違い、また上に引用した文を踏まえると、次のようにいえるかもしれません。

「是認」は対等な関係において、相手の強みや努力を探し出して認め、それを大切にすること。

動機づけ面接では、セラピストとクライエントは対等な関係です。一方は「心の専門家」、一方は「その人自身の専門家」として対等なパートナーシップを結びます。

そのときに、対等の立場でありながら、相手の強みや努力を見つけて、大切に思い、そこに言及する。それが動機づけ面接でいう「是認」です。

対等な「是認」のイラスト

一方、「ほめる」は、立場が上のものが高評価を与えること。

教師が生徒を褒める。親が子を褒める。医者が患者を褒める。など。

上のものが「ほめる」イラスト

もちろん、ほめることも相手のやる気をアップさせる方法の1つではありますが、動機づけ面接における「是認」とは別物です。

褒めることで必ずやる気がアップすればいいですが、現実はそうすんなりとは行きません。

場合によっては、褒められる側がプレッシャーを受け過ぎたり、冷めてしまったり、反発したくなったりすることもあります。

そのため、動機づけ面接では「褒める/賞賛する」ではなく「是認」を基本スキルとしています。

「ほめる」と「是認」の使い分けができるようになれば、あなたのコミュニケーションスキルが1つ増えることになります。よかったら日常の中でも試してみませんか。

(出典・参考)

“MOTIVATIONAL INTERVIEWING Third edition”(Miller and Rollnick)

『動機づけ面接 第3版 上』(ミラー&ロルニック著/原井宏明監訳)

(追記)

MIのコーディングマニュアル MITI4.2.1でも「是認」の説明に prize、是認としてコード化すべきでないものの例に praise がでてきます。

(prizing=重んじる)

It does not have to be focused on the change goal and could reflect a “prizing” of the client for a specific treat, behavior, accomplishment, skill, or strength.

変化のゴールにフォーカスする必要がなく、特定の性質、行動、達成度、スキル、 または強みについてクライエントを「重んじる」ことを反映することでよい。

(praising=称賛)

Affirm should not be coded automatically for the clinician’s agreeing with, approval of, cheerleading for, or non-specific praising of the client.

AFは、クライエントに対する臨床家の同意、承認、応援、または非特異的な称賛について自動的にコード化すべきではない。

※MITIのマニュアルについてはCoding Lab japanをご参照ください。

 

→動機づけ面接とREBT(論理療法)によるオンラインカウンセリング

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